Dream
□Weeeeek
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まず驚くべきはこの状況。眼前に迫る整った顔に、完璧過ぎるこの笑顔。ふん、何だよ。笑うなら心から笑いなさい!
とかなんとか言える立場でもない私は、元気にから笑いをした。
「何笑ってるんです」
「君の笑顔に感服したの」
「いい加減に杖を返して頂けませんか、ユーフェリア」
「それは聞けない願いだリドル少年」
だって返したら君、確実に呪いかけるでしょう?ニッコリと3pだけ背の低いリドル少年に笑いかけた。
「2つも年上のクセに大人気がない」
「たかが2つよ」
「ああ確かに。貴女は僕よりも《遥かに》劣っていますもんね」
「丸腰の策士ぼーやに言われたかねーよ」
「…何故、貴女がその様な事を知ったのか知りませんが」
一旦言葉を止め、リドル少年は黒いオーラを纏いながら微笑み、私を見た。素敵!貴方は正真正銘のスリザリンだわ。
「今なら言霊で人を殺せそうです」
ゆっくりと細められた、廊下の松明に揺れる紅の瞳は妖艶で、据えるように私の瞳を捉えた。
外の土砂降りの雨が中にまで入り込んできて、軽くかかって冷たい。
雷が鳴らない事が唯一の救いのように思えた。
彼の瞳は恐ろしい。まるで獲物を狙う蛇の眼のよう。そんな心の怯えとは相反して、私はフンと鼻で笑ってみせた。
「リドル少年はそんな事も出来ない?あらあらガキねー」
「僕は貴女程暇人じゃない。さっさと杖を返せ」
「んふふ。態度の悪い後輩を躾るのも先輩のおつとめ」
私は彼の杖をちらつかせ、にんまりと笑った。彼のあからさまな嫌そうな顔も可愛いらしい。
雨が降りしきる外へ視線を向け、私は決意した。
今日をこのトム・リドルにとって一生忘れられない日にしてやろう!
「さあこの杖を私から奪ってみなさい」
「は…?」
「無理だったら君の秘密、ダンブルドア先生に教えちゃうね」
「なッ…っておい、どこへ行く!」
リドルはなんだかんだ言いつつも、私を追いかけてきた。仲良し子良しよね本当。天気が悪くてもリドルは可愛い。
私たちは雨風万歳な土砂降りの中庭へ、元気に飛び出た。
「あーはん雨が痛いわね少年。水も滴るいい乙女?分かってる。おおお、土砂降り最高ー」
「…」
何なんだこの女。年上には《確実に》見えない。あ、躓いた。…本当に僕より年上なのか。
リドルの冷ややかな視線に気付いたユーフェリアは振り返り、指差した。
「トムよ。今気づいたんだけど、後ろにダンブル…」
彼女が言い終わる前にリドルは後ろを勢いよく振り返った。そして直ぐに後悔する。
…誰もいない。
「あっはは、やっぱりガキだ。ぼーや」
リドルの瞳に今度こそ殺気が宿った。綺麗な赤色が鋭い光を放つ。
「いい加減に」
今日初の稲妻がカッと光った。
「杖を返せ!」
本気で私を追いかけてきたリドルに私は余裕綽々と、必死な形相で全力疾走した。
やー楽しいわねー
思い出作りには最高な天気だったね。
ひとまず、殺され無いことを切に願いましょう。
Monday 雨の想い出