空中ブランコ

□マユゾン出現事件
1ページ/6ページ

「お前ら、早く乗れ!」

 エレベーターに乗り込んだ俺たち。よかった、助かったんだ。

「全員無事か?ちゃんといるか?」
「1、2、3、4、5、6。ああ大丈夫だ」

 因幡さんが数を数えたけど......なにかおかしい。俺の目には5人しか見えない。うーん。

「因幡さん、もう一回数えて下さい」
「大丈夫だって圭。ほら、俺に圭に優太、ガブリエラにロレンツォ弥太郎。ホラ6人だ」
「待たんかいィィィ!!」

 エレベーターの中にあったのはいつも弥太郎さんがしているメガネだった。

「これが弥太郎さんですか......ただの黒渕メガネじゃないですか!!」
「そうだよ圭、弥太郎は黒渕メガネだよ」
「そーじゃなくて、弥太郎さんには黒渕メガネしかありません!!」
「圭くん、弥太郎には黒渕メガネしかないんだよ」

 因幡さん、優太くん......。いくら俺でもなんだかかわいそうになってきたよ。弥太郎さんとはあまり話したことないというより無口な人だけど、意外と優しいかもしれないのに。そんな人を1階に、しかもあのマユゾンの群れの中に......。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ