短編

□私は意外と嫉妬深い
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突然ですが、私には同い年の彼氏がいます。
天真爛漫で、赤髪で、テニスが上手い。

告白されたのは入学してすぐのこと。
部活が終わって帰ろうとしたら校門の前で金ちゃんが待っていて、
「好きやーー!!」
って叫ばれた。
なんでも、一目惚れだったらしい。

そんな彼氏ですが、今では私もバスケと同じくらい好きです。

なのに…。
『なんでやー……』

私は勢いよく机にへたりこんだ。

「名前どないしたん?」

いきなり聞こえてきた声に驚き咄嗟に顔をあげると、そこにはスピードスターこと忍足謙也の姿があった。

『何しにきたん?
ここ、一年の教室やで。』

「この前言うとったCD貸したろ思ってん。」

そう言う謙也の手には、私がこの前聴きたいって言っていたCDがあった。
そういえば、そんなこともあったな。

『おおきにー…』

「なんや、元気ないな。
どないしたん?」

実は私と謙也は、幼馴染みだったりする。
なんでも母親同士が仲良いらしい。
私にとっては昔から、なんでも相談できるお兄ちゃん的存在なのだ。

『あんな、"コシマエ"って誰なん?』

「は?コシマエ?」

『おん。』

私のいきなりの問いかけに一瞬考える素振りをみせると、すぐに何かを思い出したようだった。

「たぶんそれ、越前くんのことや。
コシマエって書いて、エチゼンって読むねん。
東京にある青春学園っちゅー中学校の一年生やで。」

『…コシマエでもエチゼンでも、どっちでもええねん。
金ちゃん最近、口開くと"コシマエ コシマエ"言いよるねん…。』

テニスの全国大会が終わって帰ってきてから、その"コシマエ"が頻繁に出てくるようになった。
もうその名前を聞くのも嫌気がさす。
なんでコシマエのことばっかり…。
つまり私は、嫉妬しているのだ。

「金ちゃんも、わざとやないと思うで。
堪忍したって。」

そう言うと、謙也は苦笑いをこぼした。
思わず、ため息が漏れる。

「わかっとるよ、わざとじゃないことくらい。」

そう、わざとなんかじゃない。
だからこそ、余計に嫉妬してしまう。

まぁ、でも…。
「いややなー…。」
これが本音だ。


ガラッ

「名前!!!!おるかー!!??」

勢いよく開かれたドアと大きな声に、クラス中の視線が出入り口に注がれた。
しかし、そんなのお構いなしに声の主は私の方へと真っ直ぐに向かってきた。

『金ちゃん…どないしたん?』

「あんな、聞いてや!!
コシマエがなー」

わざわざ私のクラスまで来た金ちゃんの口からでてきたのは、やはりコシマエだった。
私はもはや苦笑いしかできず、謙也は隣で頭を抱えていた。


( 彼の楽しそうな笑みが目の前にあって )

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