俺は俺
□俺は俺 2
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俺のじゃない、十数年の思い出。
慣れ親しんできた方言。
俺のじゃない…はずなのに、そのどれもが懐かしくて、どうしようもなくあたたかくて。
それは、まぎれもなく俺のものだった。
『やっぱり…、俺あのまま死んだんやな』
出てくる言葉は、自然と関西弁になっていた。
こっちの方が、俺らしい気がする。
『悟…』
そして、いつもそばにいた親友の名前。
父ちゃんも、母ちゃんも、元気やろか?
弟の涼は、俺が死んだときまだ小学5年生やった。
寂しい思いしてへんやろか?
想像するだけで、胸が締め付けられる思いだった。
しかし、前世の記憶を取り戻した俺にはひとつの疑問が浮かんでいた。
目の前のこいつやったら…前世の俺なら、その答えを知っとるんやいか?
そう考えて再び落としていた顔をあげると、そいつは怪しげに笑った。
間違いない。こいつは知っとる。
疑問は、俺のなかで確信へと変わった。