黒子のバスケ(短編)

□色彩に溢れた世界
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世界を創った黒の神は退屈していた。

世界を創ったまではよかったものの、これと
いって楽しいことがなかったからだ。

なぜなら、その世界は自分と相反するように真っ白で何もなかったから。

「あ……そうだ」

黒の神はあることを思いつくと、指先を自分の体の中心に入れた。

そして取り出すと、指先に付いた色を世界につけ始めた。

1番初めに生まれた赤は、世界を統率する王になった。
赤の力で世界には生命が溢れ、鉱物が生まれた。
しかし、その性格は強欲で、いずれ自分が黒の神の地位につくことを考えていた。
己が欲しいものは全て手に入れないと気がすまない性質だからだ。


呆れた黒の神は、新しい色をその上に塗った。


2番目に生まれた緑は、赤を止めるための抑止力として、安らぎをあたえる。
しかし、その傲慢さは気に食わない地上の生物を、
時に飢饉や災害を生み出し、命を脅かしていた。


それを、赤は地上の秩序を守るために時折押さえつけた。


2色は世界の中で、世界を創り続けた。
黒の神は、2色を嬉しそうに眺めていた。


あるとき、赤が緑と喧嘩をした。
神を守るよう言い渡されていた緑は、謀反を知った赤を止めたことが原因らしい。

どちらの色も、力は平等に創ったと思っていたが、
赤が自分の力で身につけていた力により、緑が燃えていった。


このままでは、地上の生物がいなくなってしまう。


そこで、神は3番目に青を創った。
燃える大地に生命の水を与え、赤を鎮め、緑を守る。


争いは終わったが、生まれたばかり青は、二色の戦いを見て、抱いていた憤怒を爆発させ、
自ら創りだした広大な海を使って、世界中を水で溢れさせた。


続いて、4番目に創ったのは紫だった。
紫は世界を包み、その手で青の怒りをとめた。
世界は再び平和になった。


しかし、地上の葉に緑が付き始め、青の水に生命が宿り、増え始めると、
紫は鉱物や植物、動物関係なく端から暴食し始めた。


それを止めるために生まれた5番目の黄。
黄は、4色の中で一番穏やかな色を放ち、紫の暴食を包むようにとめた。
だが、やめたはいいが不満の残る紫に、黄は提案した。

緑の葉が散り、青の海が凍るとき、紫には己の力で生贄を与えると。


黄は地上であらゆる生物に希望を与えた。
しかし、希望と見せかけた光の裏に隠した色欲が、地上を淫らなものに染めていった。

赤の秩序を乱し、緑の植物と、青の生き物達を、自分の支配下でもないのに促し、
次々に生命を悪く醜く溢れ返させた。


黒の神はこれを悪いものとし、


黄に、6番目に生まれた桃を近づけた。
桃の示唆のおかげで地上での異常な繁殖はなくなった。


だが、世界をずっと黒の神の中で見ていた桃は世界の情報を詳しく知ってたため、
繁殖をやめた一部の生き物達を怠惰させ、意図的に生物の命を減らしていった。



ここで、黒の神は世界を見渡した。
以前よりも色で溢れた世界を見て、満足げに笑った。


「これが、俺の世界だ」


それぞれの6色は、お互いを脅かし、生き物を脅かし会っていたが、
それはそれで秩序が取れていて。
特に赤と緑はお互いの手を取り合うようになってからはかなり均衡状態を戻していた。
もし、この二色が暴走しても、また4人がカバーする。


生き物も増えず、減らず。


世界はとまることなく生き続けた。



ふと、白の神は自分のからだを見た。
その体は以前な黒はなく、指先に付いた黒以外真っ白になっていた。


様々な色を世界に塗った指先は、全てを染めてしまうくらい黒くなっていた。


「でも、お前じゃみんなを塗りつぶしてしまうよ」


交われば、きっとみんなこの色になってしまう。


「でも、可哀想だから、最後の俺の色をあげる」

そういって、黒の神は世界に指先をくっつけた。



白に付着した黒。


黒の神の前に現れたのは、7番目に生み出された黒だった。

「世界を創るのに、俺は力を使い果たしちゃった。
 だから、君には最後のほんの一握りの力しかあげられない。
 でも、少し力が弱いほうがいいに決まってるよね。
 だって、黒は俺の色なんだもん。あまりに強いと、全部黒く染めちゃう。
 君には世界に干渉する力をあげない。
 けど、それじゃあ可哀想だから、君には誰にも干渉されない6色の影にしてあげるよ。
 誰も知らない、誰にも見えない、でもいつもみんなといる影だ」


そういって黒の神は黒を世界の中に入れてあげた。

その瞬間、6色の背後にそれぞれの姿を模した黒が現れた。

「うん、そう。それが君の居場所だ」


黒の神は笑う。
これで、世界は出来上がった。


「俺も、もう黒じゃない。今日から白だ」


名前を改め、白の神は笑った。
そしてすぐに欠伸をした。
疲れたの白の神は一眠りすることにした。

すぐに目を閉じてしまったから、ある異変に気づかなかった。


6色の影から、神や自分とは違う色とりどりの色たちを見て、
黒が嫉妬を浮かべた瞳を細めていたことに。

もちろん、色たちは気づかない。
だって黒は、誰も知らない、誰にも見えない影だから。
力の弱い黒だから。


白の神が眠っている間も、世界は止まることなく、終わることなく生き続けた。

 キセキ
【色彩に溢れた世界】

(神から与えられたのは、色と役割と力と大罪)




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