黒子のバスケ(短編)

□緑色の傘@〜D
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「あ、雨降ってきたよ!」




帰りのホームルームが終わった後、
クラスの女子がそういった。

その声に反応して、バラバラと帰り始めていたクラスの生徒が一斉に窓を見る。



さっきまで晴れていた空には厚く広がる黒い雲。
窓の向こう側で、雨が叩きつけるように降っていた。


「うっわ、スゲー土砂降り」

俺の席にやってきた高尾が顔をゆがめる。
俺は携帯電話を取り出してニュースを見た。


「東京都内に大雨警報が出されたようだ。
 おそらく部活は無しだろうな」

「マジかよ。俺傘持ってきてねー……。
 真ちゃん傘持ってんの?」

「当然だ。傘は今日のラッキーアイテムなのだよ」

「相変わらずおは朝パネー。
 まーいいや。真ちゃん相合傘してよ」

「気色悪い言い方をするな。
 お前は濡れて帰れ」

「ひっど! 真ちゃん冷たーい」

「人事を尽くさないからこういうことになるのだよ」


ぶーぶー騒ぐ高尾を無視して、俺は窓に目をやった。



今日の蟹座は最下位。
今朝の天気予報とは裏腹の雨だが、
ラッキーアイテムの『カエルの傘』のおかげで運気はしっかりカバーされているようだ。

(これだからおは朝は見逃せない)


「お、キャプテンからメールだ」


高尾が携帯を開いてメールを確認し始める。

「今日は部活なしだって。
 筋トレは各自しっかりやっとけって」

予想的中。

「言われなくても分かっているのだよ」



すぐに部活に行けるよう準備しておいたので、帰る準備は整っている。

「そうともなれば早く帰るのだよ。いつまでも学校にいても同じだ」


俺が席を立ち歩き始めると、高尾が遅れてついてくる。

ちらりと見れば、その顔には笑み。

「何がおかしい」

「だって? やっぱり真ちゃん優しーからさぁ」


口の端をあげて、ニヒルに笑った。


「今日だけはその変な傘に感謝しとくぜ」

「誰もお前を傘に入れるとは言っていないが」

「いーじゃんいーじゃん! 固ぇこと言うなって!」

バシバシと俺の肩を叩く。


……まったく仕方のないやつだ。

「ふん。5分の1ぐらいは分けてやるのだよ」

「ケチくさ!! それ俺傘に入ってねーよ!」

「文句があるなら入るな」


混雑した廊下の中で、その喧騒にまみれながら俺たちは昇降口に向かった。
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