黒子のバスケ(短編)

□緑色の傘G
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「ついた!! ここだようち!」

十字路から5分もしないところに、笠無の家はあった。


「やっとついたか…」


道中色々ありすぎて、歩いた距離より疲れたのだよ……。



だが、すべきことはした。



「じゃあ、俺は帰る」


さっさと帰って、風呂に入りたい。


そういうと、笠無は大きな瞳をさらに大きくさせた。


「その格好で!? ちょっと待ってて!!」


そういって#NAME2#はうちの中に入っていった。


「あ、おい!」


学ランを返してもらっていないため、その場から動けない。

(早いとこ帰りたいのだよ……)






しばらくすると、笠無が戻ってきた。

一体何をしてたのだか。
人を長い間待たせておいて……。

苛立ちを感じ始めた俺に、
笠無は予想もしていなかったセリフを俺に言った。



「お母さん今日早く帰れるって言うから、うちまで送ってってくれるって!」

「…………は?」


目が点になるとは、まさにこのこと。


「だから、お母さん帰ってくるまでうちで待ってて?」


「……いや、悪いのだよ。俺は帰る」


少し待てと言われたから待っていたが、
本当に予想外の展開だ。


「その格好じゃ風邪引くよ」

「知っている。だから早く帰らせるのだよ」


(はっきり言って、手足の感覚がないのだよ)


「さっきすごい冷たかった! シャワー使っていいから!」

笠無が俺の腕を掴んだ。

……バレていたか。だが俺は引かんぞ


「結構だと言っているのだよ。

 気持ちだけもらっておっくしょんっっ!!」

「!?」


…………。

………………。




「い……今のくしゃみだよね?」


「……気持ちだけもらっておくのだよ。俺は帰る。早く学ランを返せ」

「なかったことにしないでよ! 今の絶対くしゃみでしょ!」

「……違うのだよ。語尾が羽上がってしまっただけであってだな」

「なんでそんな維持張るかなぁ……」


そんな困った顔をされても困るのはこっちなのだよ。


……まずい。

また鼻がムズムズする。


「入れってー!」

「袖を引っ張るな!」


俺とくしゃみの葛藤など知らず、肌に張り付いたワイシャツの袖を引っぱる笠無。


(まずい出る……!)


俺は咄嗟に、空いていた手で鼻をつまんだ。


「……っ」

「なんで鼻つまんでるの? ほら早く入って!」






「……ックシ」


「…………」



雨の音が、しばらく俺たちを包んだ。


……おい、何を顔を緩ませているのだよ。


「……気にしなくていいから、ね?」


少し首を横にし、困ったように笑う笠無を見て、
俺は、自分がこいつよりも子どもっぽい気がしていた。

……なんとも不服じゃないか。

つかまれた腕は、段々笠無の体温で温まり始めていた。
同時に、その体温を奪っていた。


しばらくの葛藤の中、俺は、ため息を吐いた。


「…………不覚だが、世話になるのだよ……」


納得いかなくて顔をそむけながら言えば、

端から見えた顔に、満面の笑みが浮かんでいるのが見えた。


「最初から素直に甘えとけばいいのに……。

 散らかってるけど、どーぞ」





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