黒子のバスケ(短編)

□空回りにカラ間わって
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流れ流れて時間は部活終了後。

今は部室でお着替え中。





おいおい、時間ぶっ飛びすぎだって?


そーいうなって。


バレンタインだからって、特に運動会みてーなことするわけじゃねーしさぁ。


時間の短縮っくらいちょっと妥協してよ。










運動会はなくても、チョコはどうしたんだって?




あぁ、あれから13件ほど直接来ましたよ。



知らないクラスの子から4人と、同じクラスの子から6人と、知らない先輩から3人。




もちろん断ったぜ?




合計すれば14個も貰えたのに、みんなアイツのために断ったんだ。





『高尾く〜ん、今日バレンタインだからチョコあげる〜っ』


『あ、あたしもあるよ! あげる〜』


『うわー、うまそ〜! けどわり、今年は本命からしかもらわない予定なんだ』


『え!? 本命いるの!? 誰誰誰!?』


『もちろん秘密♪』


『嘘ー……』


『え、年上、同い年!?』


『だから秘密だって』


『そのくらい教えてよ!』


『えー? 仕方ねーな。……同い年だよ』


『うっわマジで!? 誰なの!?』


『おま、さっきそれだけって言ったろ。もう言わねーから』







ざっとこんな感じ。回想終了。








つか、俺のことなんかより聞いてよ!






真ちゃん何だかんだいって俺よりチョコもらってんだぜ?!



いや、どれも全部受け取ってないんだけど。




大量にロッカーに入ってたのを俺はこの目で目撃しました。




まさか、それを律儀に全部返しに荷物持ちで渡されるとは思ってなかったけど。





やっぱ美少年はモテるんだねー。



真ちゃん、外見だけは良いから。





「ったぁ!? ちょ、なんでいきなり叩くんだよ!」


「なんか今、お前に馬鹿にされたような気がして」


「し、してねーよ! 適当なこと言うな!」


あっぶねーヒヤッとした。

口に出してたか!? と思ったけど違うみたいだ。



マジで自分の事に関してはエスパーだなコイツ。


あ、やばい。若干睨まれてる気がする。気のせい気のせい。



「トイレに行ってくるのだよ」

「おー。いってらっさーい」



着替え終わった真ちゃんは、部室から出て行く。





ただでさえきつい練習に居残りしてるやつは、俺と緑間しかいなくて、
静かな部室に戸が閉まる鉄の音が妙に響いた。





「……っはー」





自然とでたため息の原因は、俺のカバンの中のチョコレートにある。




結局、もう渡せずじまいで終わるんだろうなと思ったら、自然とため息をついていた。





もったいねー、今ので幸せどんだけ逃げたよ?



「……つか、女々しーな俺」



朝、あんなこと言われて、ガラにもなく真に受けて、渡せずにいるなんて。



つか、改めてなんか物を渡すこと自体が恥ずかしいわ!




「なーんでこんなん作っちゃったんだろ」




そんなことを言っても後の祭り。




妹ちゃんからラッピング材もらって、わざわざ丁寧に包んでやったのに、





包んだ本人が破いてるってどういうこと?







「やけ食いしてやるよ」







こーなったらもう、やけ食いしてやる。




ラッピングを全部はがして、箱のふたを開ける。





中に入っているのは生チョコ。



しかもただの生チョコじゃない。抹茶の生チョコだ。







「うわ……思ったより苦ぇ……」






っかしーな、味見したときはこんなに苦くなかったと思うんだけど……。


けど上出来だろ。
なんだかんだ言ってうまいわ。





「……何を食べているのだよ」





あ、真ちゃん帰ってきた。



「見てわかんねー? チョコレートだよチヨコレート」



「そのくらい分かっているのだよ! ……今朝のか」


「いや?」



俺の自信作ですけど、何か?



「……だったら別のやつから貰ったものか」







こいつ、またなんか不機嫌オーラ漂わせてんだけど。







「ちげーよ。つか、今日チョコ1個も受け取んなかったからな」



あー、言わなきゃカッコつけられたのにな。
一人で。


「何を嘯(うそぶ)いているのだよ。今朝も下駄箱にあったし、日中も女子から詰め寄られていたじゃないか」



「下駄箱のは、あの後返しに行きました」

「何……?」




驚いたように、少しだけ目を大きくする。


なんだよその面。


超意外って感じの顔しやがって。



「つか日中のも断ってたの見てなかったわけ?
 目の前で言ったじゃねーかよ」


そう、こいつはクラスの連中から言い寄られていたのを目の前で見ていたはずだ。

なんせお昼は一緒に食べてたからな。

耳も悪くて、目も最っ高に悪いんだったら、妥協してやんなくもないけど?





「……ふん。どういう風の吹き回しなのだよ」




「べっつにー? 俺の勝手だろ?」



そう言った途端、少し寂しげに視線がゆれたのを俺が見逃すとでも思ったか?




……あんまそれっぽい態度されると、自重してる俺が持たないんですけど。




「……生意気なやつだ」



何が生意気だよ!

お前に言われたくねーっつの。






しょーがねーな……言ってやるよ。





超かっこいい俺の愛のセリフ耳かっぽじって聞いとけ!




「俺ねー、今年は、本命以外から貰わないって決めてんだよ」




あー恥ずかし。

何が愛のセリフだよ。

寒いにも程がある。自重しろ俺。




「………」




緑間は相変わらず仏頂面だ。

……おい、なんかもっと反応しろよ。



「……そうか。だったら、その本命からはもらえたのか?」

「何、気になんの?」

「別にそういうわけではない。お前のことなどどうでもいいのだよ。ただ聞いただけだ」



おいおい、素直じゃねーやつだな〜。



スゲ―じらしたい。

けど、今日はあいにく傷心中だから素直に教えてやるよ。




「いんや、もらってない。
 期待はしてなかったけど、まさかあんな釘さされるとは思ってなかったわ」



「! ……そうか」



何がそうかだよ。

……つか、なんで微妙に笑ってるわけ?



ホントもう、マジやめて。



これ以上一人で勘違いしたくねーんだけど。



笑うとか、反則じゃね?
鏡見てみたら?


そんな穏やかな顔するとか、いつぶりに見たよ?



あー、チョコが苦い





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