黒子のバスケ(短編)

□空回りにカラ間わって
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「だったら、それはなんなのだよ」



緑間の目線の先には、真緑のチョコレート。



「ぇ、えー、これ? これは――……」



やばい、自分で作ったとかやっぱり言いたくない!!

なんだこれ、えーと、このチョコレイトはですねー!?





「……俺が、昨日買ったチョコ」




……ウン、後悔はしてねーけど。




真ちゃんめっちゃ凝視してるよ!

なんだよその目!



「そんなカビみたいなチョコがあるというのか……!?」



「ひでー言い草だな!? カビじゃねーし!
 ちゃんと食えるから!!」


くっそ俺の自信作になんてこと言いやがるこのウドの大木は――!!



怪しげにチョコを見る瞳。

ちょっと黙ったと思ったら、手が伸びてきた。



「……俺も一つもらうのだよ」


「え!?」




おいおいおいおいまさかなんだけど!?




テーピングのしていない右の手の平が、



俺の好きな白くて細長い指が、





緑色のそれを、つまんだ。







「あ、おい! 勝手に……」






止めてももう遅かった。




遠慮がちに口をあけて、
緑色のチョコは、その口の中に入った。




こいつ食いやがった!




「……」





しばらく、咀嚼(そしゃく)。



なんだかんだいって、悲願が叶ってしまった俺は、
なんだかんだいって、答えを期待していた。




しばらく、咀嚼(そしゃく)。





「……ど、ど、ぅ……」









待ちきれなくて聞いた瞬間、








「……苦すぎるのだよ」







整った顔が、ものすごくゆがんだ。

そりゃもう、これ以上にないくらい。


「……」






あーー……、そういえば思い出したわ。



こいつ、こんな見た目の割に甘党だったっけ。





「でもその顔はねぇんじゃねぇ!?」


おもわず口走った俺の言葉に
相変わらず顔色を変えずにただ咀嚼(そしゃく)する。



「苦い物は苦いのだよ。
 本当にこれ、チョコレートなのか?」


「正真正銘チョコだっつの!! 草でもカビでも○ん○でもねーぞ!!」


「最後は言わなくてよかったのだよ!!」



おっといけない……思わず言葉に。



「ちっ……まずいなら食うなっつの」



あーあ。バカした。

すげーバカした。

こいついっつも何飲んでんのか知ってんだろ?

こいつがいつも、自販機で飽きずに買っているものはなんだ?




つかその前に、なれねーことはするもんじゃなかったな。

今スゲ―学んだ。
スゲ―学習した。




「……何をふてくされているのだよ」


そりゃふてくされたくもなりますわ!



「べっっっつに」




そっぽを向いていると、なぜかため息をつかれた。


「訳のわからんやつだ」


そういって、また手が伸びてきた。



「……まずいんなら食うなっつの」


すかさず俺はチョコを隠す。

誰がやるかってんだ。



「誰もまずいとは言っていないぞ」

「んじゃなんだよさっきの破顔っぷり!
 どう見たってまずいって感じの顔じゃん!」

「……苦かったからそういう顔になっただけだ。とにかく、よこせ」

「わ、ちょっと! 何すんだよ!」

「よこせと言っているだろう。
 以前言ったはずだ。お前のものは俺のものだと」

「言ったっけ!? つかジャイ○ンかよ!! あ!」




結局強引に奪われた。




わーんドラ○もん〜〜ジャ○アンが〜〜。




「だいたい、まずかったらいらないのだよ」



一粒つまんで、また口に入れる。



「……もう少し甘ければ、最高だな」




苦さに顔を歪めながらも、
パクパクと食べ始める。




……おいおい、なんだよそれ。

ここでデレくんの?

おいおい
勘弁しろって。





「……何ニヤニヤしているのだよ」

「……え? 何顔緩んでた?」

「一人で気持ち悪いのだよ」

「うっせーよ!」






気持ち悪くていーっつの!






だめ。





なんだかんだ嬉しいとか思ってる自分がキモい。


これ以上ないくらいダルダルに頬が緩みそうになるのをこらえるのが、精一杯。





「うまくはないが、まずくはなかったな。
 ごちそう様でしたなのだよ」



何それ、結局うまいってことじゃねーの?

それ、照れ隠しだと思っていーの?




「全部一人で食いやがって」





いや、もう妄想でもなんでもいーや。


ごちゃごちゃ考えんの疲れた。


もう勝手に解釈させてもらう。






「……なー真ちゃん」


「なんなのだよ?」




「チョコレートってさ、
 ディープキスより3倍の快楽があるんだって知ってる?」


「……だからなんだと言うのだよ」



「いや、なんとなく言ってみただけ。
 俺としては、絶対好きなやつとチューしたほうが最高だと思うって話」




「知らないのだよ……ッ!?」












あー、苦い。

次気が向いたとき作るなら、もうちょい甘めにつくるだなー……。






でも超なめらか。

思わずうっとりするくらい甘い。



……俺は違うって?

その顔鏡で見てから言えって。











「……たかッ」


「ごめん、もっかい」







でもほら、絶対そうだって。



チョコなんかより、絶対こっちのが気持ちいいって。








なぁ真ちゃん。






お前今、どんな気持ち?





俺?






俺はね、今日一日チョコもらわなくてよかったと思ってる。











……腹の底で何考えてるかって?











当たり前ぇーじゃん。





















いっつも、良くも悪くも、お前のことしか考えてないよ。





〜 END 〜
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