黒子のバスケ(短編)

□緑色の傘@〜D
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傘をさして一歩外に踏み出せば、
滝のような雨が襲った。

「ホントにすごい雨だね……」

「傘の意味がないのだよ」

まだ数歩しか歩いていないのに、すでに傘からあぶれた肩はぐっしょり濡れていた。



校門を出た頃、隣で笠無がぽつりと言った。


「なんか……ホントごめんね?」

「何が」

「いや、一緒に帰ってもらっちゃって……」


ばつが悪そうに、斜め下を向いた。

……まだ言っているのか。

「しつこいのだよ。
 それに、勘違いはやめてもらおう」

頭に疑問符を浮かべる笠無の整った顔が、俺に向けられる。


「これは俺がお前からもらった消しゴムの借りを返すためにしているだけだ。
 だから、後ろめたく思う必要はない。
 だが、あのときの借りはこれで返したからな」

「……ん。わかった」

優しく、その顔が緩んだ。

「でも、お礼は言うからね。……ありがと」

「……ふん。
 それに、申し訳ないと思っているなら早く帰るのだよ」


馴れない人からの礼にどう返していいかわからず、

ごまかすように前を向いて、

バレないように歩調を速めた。



一瞬だけ見えた。
雨のせいで更に色濃くなった笠無の制服の肩。


(……まったく。なんでこんなことまで……)


少しだけ、ほんの少しだけ。

肩が隠れるくらいには、傘を傾けてやった。


(これで風邪でもひかれたら、俺に顰蹙(ひんしゅく)が来るのだよ)


自分の肩が、さらにずっしりと重くなった。

寒いし、冷たいし、重いし。

(これだから最下位の日は嫌なのだよ)





ただ、

胸のあたりは少し暖かい気がした。




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