おがふる

□清く儚く美しく
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ねぇ男鹿、
覚えてる?

2人で見た桜。

3月3日。
男鹿の姉ちゃんの美咲さんがまだ烈怒帝留の総長やってたときにさ。
烈怒帝留の人たちとお花見するからって一緒に連れてってもらったとき。

探検しよう。
ってお前が言い出してさ。

美咲さんが遠くまで言っちゃダメよ。
なんて言ってたなぁ。

それでさ2人で探検してるときに見つけたんだよな。


1本だけポツンと立ってる桜。

1本だけなんだけどどの桜よりも綺麗でさ。

俺その時、

キレイ。

って言ったんだよな。


そしたら横で見てたお前はさ、

寂しそうだ。

って言ったんだ。


どうして?

ってきいたら

わかんねぇ。

って返事がかえってきたんだけど。

今はなんとなくわかるな。

それまで男鹿は1人だったから

その桜が孤独で寂しかった自分と重なって見えたんだろう。


その男鹿の横顔があんまりにも儚くて…

俺はとっさにお前の手を握った。

どこにも行ってほしくなくて。

そしたらさ。

お前、ちょっと驚いて、でも笑顔になって握りかえしてくれてさ。



俺嬉しかったの覚えてる。




なぁ、古市。


なに?男鹿。


あのさ。







ねぇ男鹿、

でも今はもうお前は俺がいなくても
ベル坊がいてヒルダさんがいて、神崎先輩も姫川先輩も邦枝先輩も、他にもいろんな仲間がいて。

よかった。

お前はもう孤独じゃないんだな。




ねぇ男鹿、

じゃあさ俺、桜になるよ。

男鹿と見たあのキレイな1本の桜に。


清く儚く美しく。



気高く咲き誇ってさ。



…お前はもう覚えてないかな。

俺との約束。




なぁ、古市。

なに?男鹿。


姉貴ぐらいの年になったら今度は2人っきりでお花見しよーぜ。
この桜の木も一緒にさ。

うん!約束だよ。



あぁ、約束だ。



ねぇ男鹿、

君は覚えていますか?






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