おがふる

□ねぇ、「ボク」が泣いてるんだけど 4
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「古市!!」

ガバッと起き上がった男鹿。

真っ暗だ。

そこではっと気がつく。
あぁ、ここは俺の部屋だ。

「…古市…」
「呼んだ?」
「!?」

男鹿がその声に反応して声のした方。つまり窓の方をむくとそこには古市が。
…いや、春翔が窓に腰掛けていた。

「…春翔…」

やっほぉ。こんばんわ、たっちゃん。
春翔はそう言うとふわりと窓辺から降りた。
男鹿はベル坊を起こさないようにしながらベットから降りると窓辺に歩いて近づいた。

「どしたの?たっちゃん。」

男鹿の頭の中では先ほどの古市の姿が。

「俺は…」

「ん?」
春翔はニコリとして相槌をうつ。

「俺…古市が笑ったところを見てない。」

「…貴ちゃんは、いっつも笑ってたよ?」
少し思わせぶりに笑う春翔。

「そうじゃねぇよ。
…なんつーか、いつもはその…。
作り笑いみたいな…」

「…ようやく、気づいたんだね。」

男鹿が言葉に詰まっていると春翔がそう言った。
「たっちゃんの言いたいこと、分かったよ。
じゃあどうして貴ちゃんが作り笑いするようになったのか、分かる?」

「…それが、わかんねぇんだ。」
男鹿が苦い顔をして言った。

「そっか、じゃあ大ヒント。
…たっちゃんが貴ちゃんの笑顔を見なくなったのは、高校に入ってからだよ。」

春翔はそう言った。
男鹿はうーむと考えている。

「…貴ちゃんはさ…」
そこまで言って春翔は黙り込んでしまった。
言うか言うまいか迷っているようだ。
そして考えた末こう言った。
「たっちゃんのこと大好きでさ、たっちゃんの隣にいられるだけで幸せでさ。
本当はスッゴく寂しがり屋さん。」

「!!」

男鹿がはっとした。
クスクスと笑う春翔。

「たっちゃん。
今から貴ちゃんに変わってあげるから、少しお話したらどうかな?」
そっと微笑んで春翔は男鹿にそう言った。

「たっちゃんはズルいと思う。

でも、貴ちゃんもズルいとボクは思うんだ。

だから、ね。
たっちゃんも気づきかけみたいだからあとは2人に任せるよ。」

春翔はとびっきりの笑顔で言った。
その笑顔が、
笑顔で心から笑っていたときの古市に重なって見えたのだった。
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