おがふる

□永遠なんてない
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しばらくして男鹿と邦枝は付き合いだした。


周りには内緒で。


でも、俺は知ってる。



ケータイにすぐ出なくなった。

メールの返事が少なくなった。

…男鹿が俺を抱かなくなった。


そういう雰囲気になるとやんわりと避ける。


俺が気づいてないと思ってる。


俺が何も言わないから。






そのうち高校を卒業して、大学も出て。




ひさしぶりに男鹿から連絡が来て、今男鹿が1人で住んでいる家に呼ばれた。





もしかして、期待してはいけない、それでもしてしまう少しの期待。



そんな期待はあっさりと、そして粉々に砕かれる。






もう何年ぶりになろうか、俺は男鹿に抱かれた。

…優しく。

そこで俺は気づいてしまった。




情事後怠い身体をベッドに預けていたとき。

シャワーを浴びて出てきた男鹿。

真剣な顔をしていて。




「俺ら、もう終わりにしよう。


俺さ、結婚する事にしたから。」



ドクンッと胸が鳴った。


ああ、やっぱり。


なんとなく気づいていた。


だって優しいだけだったから。


行為に愛がなかったから。


1回もキスしてくれなかったから…。


なんで最後に抱いたの?


それは男鹿のケジメのつもりだろう。


ほらね、やっぱり。

男鹿は優しい。



「相手は、邦枝?」


「…ああ。」


気まずそうな男鹿。


「そっか、おめでと。」


男鹿だって悩んだんだろう。


だから、最後くらい、男鹿が笑顔で暮らせるように送ってあげよう。




「ああ、さんきゅー。」


あのさ、古市…


謝ろうとする男鹿を手で制す。


「謝んなよ?お前が決めたことだろ?
お前が幸せなら、俺も嬉しい。」








うそつき…。



俺は男鹿にシャワーを借りてから自宅のアパートへと戻ってきた。

電気もつけずそのまま寝室へと直行する。



「うそつき…」


男鹿の前では決して見せまいと笑って堪えていた涙が一気に溢れ出てきた。



…うそつき…


俺のこと一生大切にするって言ったのに。

絶対守るって言ったのに…



「ばか……だいっきらい…」


ばか……



うそつき…



嫌い……



男鹿なんか…


「…すき……おが…好き…」


愛してほしい。


男鹿の愛がほしい。


戻りたい。


男鹿が俺を見てくれていたあの頃に…



うそつき、好き、嫌い


色んな感情が溢れてきて


痛いよ、心臓が痛い。

頭も痛い。



ばか…





ごめんね…




大好きだよ…




end.



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