おがふる連載

□第10話
2ページ/3ページ

第10話
古市貴之、『はじめまして。』


古市がゆったりとした足取りで男鹿たちに近づく。

男鹿たちは唖然としたまま突っ立っている。

男鹿がはっ、としたときにはもう古市は男鹿の目の前に来て背中におぶさっているベル坊の頭を撫でていた。


ぱっと古市の腕をつかもうとした手はさらりと古市によけられた。

「おい…古市…」

男鹿が困惑気に古市に話しかける。


しかし古市は男鹿の話しかけには答えず今度はヒルダの方へ歩いていく。


そしてヒルダの前までくると軽やかに、そして舞うようにお辞儀をした。

お辞儀をした。

それだけのしぐさなのにひどく優雅で美しく、見るものすべてを魅了した。

ヒルダはそれに微笑みかけた。


男鹿たちは驚いた。


だってそうだろう。


ヒルダと愛しの主君などではない。


あの古市とヒルダなのだ。


ヒルダはなにかと言って寄ってくる古市を毛嫌いしていたのではなかったのか?

そんな疑問が男鹿たちにはあった。

男鹿はわからないが少なくとも石矢魔メンバーはそう思っていたはずだ。

それがだ。

何故ヒルダが古市に微笑んでいるのか。

疑問でしかないだろう。


そんな困惑気味の男鹿たちを放っておいて古市たちは呑気に話をしていた。


「面倒おかけしてしまいましたね。」


そう言う古市。

「かまわん。私とお前の仲だろう。



…そうだな…

礼といっちゃ図々しいがまた茶でもさそってくれ。」


そう言ったヒルダにさらに困惑する男鹿たち。


「もちろん喜んで。

お茶菓子も用意しておきますね。」


そんな談笑のあと古市はまた自分の仲間のもとへゆったりと歩いて帰り男鹿とまた向かい合った。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ