おがふる連載

□第2話
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「古市!」

そう言うやいなや男鹿は古市を抱きしめた。

「ちょ…男鹿?」

困ったように笑いつつも男鹿の背中を優しくポンポンと叩く古市。

ヒルダと古市とともにきていたマモンはお互いやれやれと肩をすくめ笑いあっている。

ひさしぶりに穏やかなひと時だった。



「で、さきほどのつづきだが…」

「おー。」

ヒルダが話の続きをしようとするが目の前には古市にひっつく男鹿の姿。

「男鹿、ヒルダさんが話しにくいって。
そろそろはなれようか。」

以心伝心したのか古市がヒルダの気持ちを代弁した。
…が。

「やだ。」

男鹿の返事は即答だった。

ヒルダは呆れマモンと古市は苦笑した。

そしてかれこれ30分。
ようやく古市の身体から離れた頃には昼休みが終わっていた。

「で?話ってなんだよ。」
横に古市を座らせることでようやく古市をはなした男鹿がたずねた。

「てか、チャイムなったけどいいのか?」

「べつにいい。」

古市の心配も即答でかえされた。

「…やっぱり、今日はもういいや。」
少し考えて古市は言った。 

「む?」

古市はマモンを見た。

「…構いませんか?
夜には、ちゃんと話します。」

「ああ、そうだね。
まだ時間もあることだし。
…今日はこれから2人でどこかへ行ってくるのはどうだい?」

マモンにそう提案され男鹿はぱっとキラキラした笑顔を見せた。

「坊ちゃまは私が見ておいてやろう。」

ヒルダもそう頷いた。

「よし!そうときまれば行くぞ古市!」

そういい男鹿は古市の手を引いた。

「あ、ありがとう。マモンさん、ヒルダさん。」

男鹿に腕をひかれながらもそう叫んだ古市は次の瞬間にはもういなかった。


静かになった屋上に2人(ベル坊を入れれば3人だが。)

「…彼も少しおびえているのだな。
無理もない。」

「そうだろうな。いきなりこんなことになってしまったのだ…。
怖くとも仕方ない。


古市は…これから…死なねばならぬのだからな…。」
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