おがふる連載

□第5話
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「大丈夫だ。安心しろよ。
俺がついてる。」

「ありがと、男鹿…。」

震える手をそっと掴んだ。

俺の部屋。ベッドの上で2人座っている。
側にはマモンとヒルダがいる。


古市はぎこちなくもニコリと笑った。

その顔を見て居たたまれなくなりそのままギュッと抱き締める。

すると震えているのが手だけではないことに気づく。

華奢な身体全てが物語っている恐怖。

こいつは今までずっとこの恐怖と闘ってきた。

こいつの…古市の恐怖が…
少しでも、和らぐように。





古市は…死んだ。

俺の腕の中で。

俺の手を握ったまま。

次第にその身体は、その手は輝きだして、透けていった。

そしてそのまま消えた。

俺の腕にはまだ古市の温もりが確かに感じられた。



「長い時間は彼の魂を留めておくことはできない。
急ぐんだ。」

「やり方はわかっているな?」

「ああ。」

俺は瞳を閉じて思い浮かべた。

古市の姿を。



しばらくすると瞳を閉じてはいるが何かが輝いているのがわかる。



さらに時間がたつと、辺りが暗くなったのがわかった。

俺は瞳をあけることができなかった。

無事に成功しただろうか。

失敗しているのでは…。

らしくもない、そんな考えばかりが頭をよぎる。

ふと手に冷たい何かが触れた。

自分の好きな声に呼ばれた気がした。
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