古市くん嫌われ

□It is falsehood instead of being true. 3
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深夜。
ぐっすり眠る少年。
その横には赤ん坊がすやすやと眠っている。

そこへそっと窓を開けてするりと猫のように物音をたてずに入ってきた少年。

よく見ると背中には羽が生えている。

たしかにここは2階だが…
鍵ぐらいはしめたらどうなんだ。
そう思ったがこっちは鍵があいてなかったらあけるのが面倒なので良しとしておこう。

そう思いながらそっと少年が眠っているベッドの側まできた。

そしてじっと少年を見下ろす。
その瞳は優しげな、しかし悲しげなものだった。

少年はそっと手を差し伸べて眠っている少年の真っ黒な髪にふれようとしてやめた。
差し伸べた手をゆっくりとおろす。

自分には、そんな資格はないのだ。

恋人であった彼を悲しませてしまった。
裏切ってしまった。
理由がどうであれ、彼が悲しんでいることには変わりない。

生き返ってからもう6日がたってしまった。
7日目である明日の夜12時、遂に自分の命は尽きてしまう。
羽をもがれ、地獄の業火に焼かれながら…永遠に苦しみ続けることになるのだろう。

いい気味だ。と自嘲気味に笑う。

ただ、ただ最後に。男鹿に伝えたいことがあった。

おそらく明日は伝えるとはできないだろうから。

男鹿の生活習慣は驚くほど不規則だから、明日何時に寝ているかわからないからな。

ずいぶん自分勝手なのはわかってる。
でも、本当にこれで最後だから。



ねぇ、男鹿。


「ごめんな。愛してるよ。」


自分の頬に伝う一筋の雫。
それに気づかないフリをして、そっと窓から暗闇に姿を消した。
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