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□呼ばれぬ名 5
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「昨日の夜、俺みたいたやつがお前の部屋にいた?」

「あー、いた。お前そっくりだった。
変な服きてたけど…。」

古市はふーん。とどうでもよさそうに返事をした。

「お前が見たなら、それは俺だったんじゃね?」

うんうん、と頷いた後は?となった。

じゃあこいつ、昨日の夜俺の部屋にきてたのか?
窓から飛び降りたのは?
あの変な格好は?
聞きたいことは山ほどあるのに聞けないのは古市が笑っていなかったから。
古市は真剣な顔をして俺を見ていた。

古市ははあ、とため息をはいたあと苦笑した。

「お前が見たならそれは俺だよ。」

「ちょっまてよ!ならお前、昨日俺の家にきたってのかよ!?」

「…行ったよ。」

「なっ!」

「なんで驚くんだよ。
お前が言ったんだろ?
俺がいたって。」

思わず立ち止まったら古市も半歩進んで立ち止まって振り返った。

「…本当に、俺がわからないのか?」

「は?お前は古市だろ?」

古市はふるふると頭をふって顔をあげた。
その顔は笑っていたが悲しそうな表情だった。

「たしかに俺は古市だよ。
今も、昔も、お前と出会ったときから古市だ。」

「お前なに言ってやがる。」
という言葉は俺の口から出ることはなかった。

ふわりとそいつがあらわれたから。

「やあ、ソロモン。」

「…シトリー。」

そう、シトリーが。
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