シリーズ
□呼ばれぬ名 6
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「…ソロモン、思い出さないな…。」
「…そう、だな。」
暗い夜道を歩く2つの影。
「なぜ思い出さないのか、わかるか?」
「…多分、『あれ』の影響だろうな。」
古市の答えにやはりか、と答えるシトリー。
「思い出すのだろうか?」
「さあ。…でも『あれ』が原因ならば思い出すのは難しいと思う。」
「…確かに、知らぬ間に彼自身のトラウマになっているのだとしたら…。」
「…心配いらないよ、シトリー。
きっと、思い出すさ。」
そう言って笑う古市。
「じゃあ、俺は帰るよ。」
古市は自分の家の前までくるとそう言って帰った。
笑顔で見送っていたシトリーは古市の姿が見えなくなるとふっと心配そうな顔をした。
『きっと、思い出すさ。』
古市の言葉が頭をよぎった。
彼がそう言ったとき、本当にすがるような想いだったのだろう。
君自身はは気づいていないかもしれないが、私にはそう見えてならなかったよ。
暗い夜道に影1つ。