神速の風

□朝練は試練
1ページ/1ページ

【疾世の朝練】



今日は野球部の朝練に顔をだす日

朝の時と午後の時とでは、微妙に筋肉の動きが違ってくる

その変化を見る為、たまに朝練に参加して部員達の筋肉の動きを観察する訳で…

まぁ、詳しく知りたい場合はW主人公設定Wを見て下さい

とにかく!!

この朝練の時間帯がかなり問題です。

女子寮から野球部のグランドまでかなり距離がある上、カラスが居る場所を通過しないといけない…

何故かカラスに目を付けられた私は、朝練にいくたび毎回毎回カラスに追われています

純兄かてっつんか片岡監督かハルちゃんに、遭遇すれば必ずカラスを追い払える。

ただ、たんばんや沢村に会うと逆にカラスがヒートアップしてしまう。

私にとっては一か八かの勝負どころ…

疾世
「寄るなっ!近づかないで!」

カァカァ カァカァ

あと少しで野球部のグランドにつく、私は全力疾走する

疾世
「!!」

そして見つけた人の姿…あれは、

疾世
「たんばん!逃げて逃げて!」

野球部のエースこと丹波(たんばん)だった。

丹波
「疾世、一体どうしーー」

疾世
「いいから走って!」

この異様な光景に驚いているたんばんに説明してる暇なんてない。

疾世
「頭が光ってるから!カラスから逃げて!」

たんばんの頭は髪の毛一本ない。

しかも朝日が程よく照らしている

カラスからすれば恰好の獲物になる

私はすれ違いざまに、たんばんの腕をガッシリ掴むと走る…ひたすら走る

丹波
「うぉ、」

疾世
「全力疾走するのっ!」

もうすぐグランドに入れる…

グランドまで来れば、金網が邪魔をしてカラスは入ってこない。

いや、正しくは上から通らないと行けないから私の方に来るまでに時間がかかる。

その間にカラスの目の届かない場所…ブルペンとか倉庫とかに隠れれば私の勝ち!

疾世
「っ!」

だけど、肝心のグランドへの入り口が閉まっていた…

私の不運は本日も絶好超のようだ

疾世
「来るのが早すぎたのね、仕方ないプランCに変更!」

丹波
「プランCとはなんーー」

たんばんが何か言ってるけど構ってる暇はない。

とにかく、男子寮へ走りだす

プランC……グランドではなく男子寮へと逃げる。
そこで、ハルちゃんに会えればなおOK

カァカァ カァカァ

カラスがスピードアップしてきた…

疾世
「もうすぐっ、」

男子寮が見えてくる

だけど…あそこにいるのは…

沢村
「?!疾世先輩、また追われてるんすね、今度こそ俺がーー」

疾世
「威嚇しなくていいから」

気持ちは嬉しいけど、沢村がカラスを追い払おうとするたびカラスは警戒し、より凶暴になる

沢村
「ぐっ、」

疾世は沢村が喋り出す前に、懐に一発拳を当て、倒れる前に衿をつかみ引きずりながら走る

疾世
「ごめんね、お菓子あげるから許して」

などと言ってるが、半分なにが起こったのか分からない沢村には寝耳に水だった

カァカァ カァカァ

疾世
「たんばん、ちゃんと走って!!それでも野球部なの!チーター様(倉持)の如く!タイヤのA(沢村)の如く!」

丹波
「チーター?タイヤのA?…なんの事かは分からんが、その、離してくれれば、」

顔を真っ赤にしている丹波は、恥ずかしさのあまり言葉もたどたどしい

疾世
「いいから走れ!!」

だが、疾世はより強く丹波を掴むと沢村を引きずる

と、向こうの方でピンクの髪が見えた気がした疾世は迷わず、そちらへと向かう

疾世
「ハルちゃーーー」

たどり着いた先にいたのは、春市ではなくその兄の亮介だった

亮介
「春市ならあっち。」

すぐに状況を理解した亮介は、右手側にある扉を指差す

疾世
「ありがとう、ついでにあげる!」

丹波
「うお?!」

丹波を亮介の方へ移動させ、疾世は沢村を引きずりながら春市を目指す

カァカァ カァカァ

疾世が扉に手を伸ばした所で、カラスに妨害され後ろへ飛びのく

カラスは扉の前を陣取り、疾世を見据えたまま動かない

疾世
「……にゃろー」

負けじと疾世もカラスから目を離さず、お互い睨み合う時間が続く

カァカァ

疾世
「…ガオ!ガオ!」

お互い威嚇していると、扉が音をたてて開く

ガチャ

伊佐敷
「誰だオラ!ギャアギャア騒いでやがる奴はーー」

カラスは素早く疾世に襲いかかる

疾世
「ひゃ、」

ギリギリの所でしゃがみ攻撃を避けた疾世は、いまだ意識をハッキリさせていない沢村を両手で掴むと、そのまま勢いをつけ回した

カァカァ カァカァ

疾世
「純兄!」

沢村を回した事により、カラスは怯み距離をとる

あとは、伊佐敷にいつもの様に吠えてもらえれば追い払える…

疾世
「あ、」

伊佐敷
「うぉ!」

はずだった。

が、勢いおいが収まらず、疾世は伊佐敷目掛けて沢村をぶん投げてしまった。

もちろん、伊佐敷は沢村の下敷きになる

カァカァ

疾世
「っ!」

隙をついたカラスはまたもや、疾世目掛けて突進する

疾世
(もうだめっ、)

一撃を覚悟した疾世は、素早くガードの体制をとった

春市
「こっち」

部屋の中から騒ぎを嗅ぎつけた春市が出てき、疾世を強く引っ張った

疾世
「ハルちゃん!!」

春市は疾世を引っ張りながら、全速力で走り角を曲がった

春市
「伏せて」

疾世
「きゃ、」

そこで、急に頭を抑えられしゃがむ疾世

カラスは疾世達に気づかず前を通り過ぎた

カァカァ カァカァ

春市
「今のうちに、こっちに」

近くにあった部屋に春市は疾世と入る

ガチャ

扉を閉めると安心した疾世はその場で崩れおちた

疾世
「今度こそダメかと思った……ハルちゃん、ありがとう」

窮地を助けてくれた春市に疾世は思わず涙ぐむ

春市
「そんな大袈裟な、それより大丈夫?怪我とかしてない?」

疾世
「うん、全然平気だよ。ハルちゃんが助けてくれたから」

春市
「ならよかった///」



御幸
「ゴホン、お前ら…つーか疾世。」

初めから居た御幸、倉持、結城、その他数名の部員達は目を点にし視線を疾世に向けていた

名前を呼ばれて気づいた疾世は御幸を見る

春市
「あ!!」

疾世
「ん?」

そこで春市は気づいた

ここは男子更衣室なんだと。

しかも、ほとんど着替えの途中で上半身裸の者たちばかり…

普通の女の子なら顔を赤くして、恥じらい…すぐさま出ていくだろう

疾世
「ごめんごめん、気にしないで。ついでだし筋肉見ようか?」

何とも思っていないどころか、恥じらいすらない疾世は顔色一つ変えずに言い放つ

春市
「えぇ!」

倉持
「なっ!」

御幸
「あー、そうきたか…」

結城
「うむ。ついでなら頼もーー」

倉持
「哲さん、それシャレになりませんって」

唯一頷く結城を、倉持は必死に止める

御幸
「いいから疾世出ていけ」

疾世
「なんで?だってーー」

春市
「失礼しました!」

慌てて春市は疾世の手を取りそこから出て行った

疾世の朝練はいつもこんな感じで始まる。

本日の被害者
【偶然その場に居合わせた丹波】
【一発浴びたうえに、投げ捨てられた沢村】
【沢村をなげられた伊佐敷】
【裸を見られた部員達】

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ