神速の風

□恋?
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疾世
「純兄、スコアブックどこにあるか知らない?礼先生みつからなくて」

伊佐敷
「それなら御幸じゃねーか、よく持ち歩いてやがるからな」

疾世
「あー…そう、じゃ、いいや」

御幸の名前がでた途端、気まずそうに言葉を詰まらせ疾世はスコアブックを諦める

伊佐敷
「?」

亮介
「御幸と何かあったの」

疾世
「え?!、べ別になにもないから、それじゃ」

慌てて疾世はその場を去った

亮介
「あそこまで動揺するなんて、分かりやすいね」

伊佐敷
「どうしやがったんだ?」

ーーーー

疾世
「フゥー、今は御幸一也に会いたくないからな…」

こないだの事を思い出すだけで、まだ感情が高ぶってしまう…

しばらくは絶対会いたくない。

疾世
「この気持ちが収まるまで、顔見ないようにしなきゃ」

この独り言を気になって後をつけていた伊佐敷に、しっかり聞かれていた事など疾世は知らなかった

伊佐敷
「……まじかよ、」

何かを勘違いしてしまった伊佐敷は、文字通り間抜けな顔で去る妹の背中を見つめるしかなかった

ーーーー

伊佐敷
「おい、御幸…顔かせ、オラ」

午後練が終わり、食堂に向かう途中御幸は伊佐敷に呼び出された

御幸
「どうかしたんですか」

いつになく真剣な表情の伊佐敷に御幸は違和感を覚えた

伊佐敷
「お前……疾世と同じクラスだったよな」

御幸
「疾世?はい、そうですけど」

伊佐敷
「………どう思ってやがんだ、」

間をたっぷりおいた後、伊佐敷は勇気をふりしぼって口を開いた…が、小声すぎて聞き取れない

御幸
「あいつがどうかしたんですか」

伊佐敷
「〜〜っ、だから!疾世の事がす、す、す、」

御幸
「はい?」

いきなり声を荒げた伊佐敷に、その場にいた部員達も注目する

伊佐敷
「すす、す、好きかって聞いてんだぁぁ!オラぁぁぁ!」

御幸
「………」

あまりの突然な言葉に御幸の頭の中は真っ白になる

対して伊佐敷は顔を真っ赤にしている

結城
「そうなのか?」

亮介
「どおりでこないだ神凪の様子がおかしかったんだ。」

伊佐敷
「最近御幸をやけに避けてやがるしな、」

確かに、ここ最近まともに疾世と御幸は会話どころか顔を見た事もない

今まで気にも止めなかった御幸だが、改めて思い出してみると疾世の行動はすべて御幸を避けていた

御幸
「とりあえず落ち着いて下さい、疾世が俺を避けてるのは多分ーー」

伊佐敷
「やっぱ言んじゃねー!!そういうのは、本人どおしで勝手にやりがれ!オラ!」

亮介
「本当にいいの神凪のお兄ちゃんなんでしょ、悪い虫がつかないよう見守るのも役目だと思うけどなぁ」

結城
「一番大事なのは本人の気持ちだろう。俺は疾世が幸せならいいと思うぞ」

亮介
「そういうのって最初だけは幸せだと思えるけど後から後悔して悲しむパターンも、充分あり得ると思うけど?しかも相手は御幸だし」

御幸
「いやいや亮さん、俺の事どう思ってるんですか」

伊佐敷
「〜〜っ!!とにかくだぁ!あいつの気持ちを受け止めるかどうかは関係ねぇ!悲しませるようなーー」

疾世
「あ、いたいた純兄!借りてたノート!返しにきたよ」

遠くから手を振りながら話題の疾世が近寄ってくる

亮介
「噂をすればだね」

結城
「丁度いい、聞いてみてはどうだ」

疾世からは、御幸が視覚になっていて見えない

何も知らない疾世は軽やかな足取りでノートを伊佐敷に差し出した

疾世
「はい、ありがとうって、げっ!み、みゆ、き…」

伊佐敷の隣りにいた御幸と目が会った途端に、数本後ろへ下がった

誰が見ても明らかに動揺している

疾世
「ぷっ、あははははは!ちょっと無理無理、あははははは、まだ笑が止まらないからっ、あははははははは」

伊佐敷達が何かを言う前に疾世はお腹を抱え笑い声をあげた

唯一、状況がのみ込めている御幸だけが顔を引きつらせながら口を開く

御幸
「まだ引きずってやがったか、」

疾世
「だって、あははは、あり得ないんだもん!見えないし、あははははは」

御幸
「ここまで爆笑されると、いっそ清々しいな」

疾世
「もう、ダメ…あははははは、笑い、死んじゃう…はは、あははははは」

とりあえず疾世はこれ以上御幸の顔を見ないよう、伊佐敷の背中に隠れた

結城
「なぜ爆笑してるんだ」

疾世
「へ?だって御幸が面白くって、」

御幸
「お前が勝手に笑ってるだけだろ」

疾世
「だって、御幸が…御幸が、イケメンキャッチャーとか、あり得ない、あははははははは」

伊佐敷
「あ"?」

御幸
「こいつ、俺がイケメンキャッチャーって呼ばれてる事知って、それからあり得ないって俺見るたびに爆笑するんですよ。」



伊佐敷
「じゃあ、なんだ…御幸を避けてたのは…」

疾世
「あれバレてた?だって顔見たら笑っちゃうし、」

亮介
「なんだやっぱり、そんな理由だったんだ。残念」

伊佐敷
「なっ?!」

結城
「純の勘違いか」

疾世
「え、何?純兄がどうかしたの」

亮介
「うん。神凪が御幸の事をーー」

伊佐敷
「だぁあぁ!言うんじゃねぇぇ、」

疾世
「?あ、大変早く寮に戻らないとご飯の時間過ぎちゃう。じゃね」

疾世は急いで女子寮へと戻った





御幸
「あいつに、恋だの愛だのは無縁だと思いますよ」

その場にいる全員が納得した瞬間だった。
 

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