神速の風

□オレ様キング登場
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ミンミン ミンミン

ミンミン ミンミン

夏休み真っ盛り

野球部は毎日のように練習に明け暮れている

今日も青道高校には彼らの声が響き渡ってーーーいなかった

疾世
「………」

そう、今日の練習は午前まで。

午後はないのだ。

そう、野球部の練習はない。

疾世
「寝てるわね、完全に。」

疾世は一人、公園の木の前に立ち尽くしていた

二年生夏休みの宿題の一つに ”街の風景” についてのレポート提出が出された

忙しい野球部からしたら、ノコノコと街に出掛けている時間なんてない

そこで、三人でやれば早く終わるのではとなり、練習が午前しかない今日にさっさと出掛けてしまおう……

疾世
(そう約束したわよね)

お昼ご飯を食べたらすぐに行くと、確かに約束した覚えのある疾世は額を抑えた

疾世
「私が甘かった。」

さっきから電話をしているが返事はない

完全に疲れて寝ているパターンだと簡単に想像できてしまう

疾世
「どうしようかな…疲れているのに起こすのもなぁ〜」

いくら友達が居ないコンビだとしても、約束を簡単に破るような奴らじゃないのは分かってるし

よっぽど疲れてるって事だろうし

……

疾世
「よし、起きるまで一人で色々回ってみよう!写真撮っておけば資料にもなるし!」

本当なら私一人で二人のレポートもしてあげたいけど、それは流石にルール違反だし

せめて、二人が楽なように資料を集めてあげるだけならいいよね

疾世
「そのうち起きて来るだろうし」

気合を入れて私は駅に向かって歩き出す


ーーーー


ザワザワ ザワザワ

疾世
(うわ、人混みだらけ)

夏休みの怖さを改めて実感してしまう

人の波に押され疾世は、目に付いた路地に逃げ込んだ

疾世
「なかなか大変な冒険になりそう」

行き慣れてるはずの道ですら今は恐ろしい事になっている

疾世
「これじゃ、写真どころかじっくり課題を探す事も出来ないな」

いや、こんな弱気じゃ駄目だ

疾世
「今日中に資料集めるんだから!」

決意を新たに疾世は一歩を踏み出した

ーー瞬間ーー

誰かとぶつかった

疾世
「わ、」


「のけっ、」

軽く突き飛ばされ疾世はよろめく

男は帽子を深く被り顔を隠していた

おまけに女性物の鞄を抱きかかえている

疾世
(まさか、ひったくり?!)

女性
「誰かーー!私のかばんを取り返して!」

その叫び声が疾世の推測を肯定した

男はさっさと走り去るが、疾世は追いかけた
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