神速の風

□女神誕生
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疾世
「ふわぁ〜、疲れた」

珍しく女子寮の自室に引きこもっていた疾世は、大きく伸びをする

土曜日…いつもなら、委員会や生徒会、野球部に駆り出されている疾世が寮にいるのには理由があった

疾世
「流石に今回はヤバかったかな…」

右腕に巻かれたぐるぐる巻きの包帯を見ながら思い出す

ーー昨日ーー

事件は金曜日の朝に起こった

2日間の祝日を挟むため、たまに開かれる金曜日朝の朝礼

倉持
「ふわぁ〜ねみー」

疾世
「堂々と欠伸をしないっ!」

亮介直伝のチョップを見舞う疾世

倉持
「って、何すんだよ疾世!…つか、何してんだ?」

いきなり攻撃された事よりも、肩からやや大きめのたすきを掛けた同級生に驚く

疾世
「たすきに書いてあるでしょ、風紀委員長代理って。」

御幸
「代理ってなんだよ代理って。」

滅多に見ない肩書きに思わず口を挟んでしまった御幸

疾世
「風紀委員長が風邪で寝込んでで朝礼の見張りが出来ないから、代わりに私にしてくれって頼まれたの」

御幸
「相変わらず人望だけはあるよな。」

疾世
「人望なんてないよ、ただ他の風紀委員の人達も自分たちの仕事で手一杯だし、朝礼の間だけなら楽なもんだから了承しただけ、」

すっかり慣れてしまった疾世は、特に気にしている様子もない

三年生の列見てくるから。と言い残し疾世はさっさとその場を離れた

倉持
「疾世って無駄に頼りがいあんだよな。うちの一年にも人気あるし」

御幸
「ま、同じクラスになんねーとあいつの本当の性格は分かんねーし、詐欺みたいなもんだぜ?実際」

破天荒、残念、馬鹿、不運体質…

この4拍子を兼ね備えた疾世と、一緒に居る時間が長ければ長いほど巻きぞえは増えるのだから…

なんだかんだで、朝礼は始まった

校長
「この4日の休みをどう過ごすかは君達次第だ。週末明けの実力テストに備えるのもよし、部に打ち明けるのもよし、ただ…休み明けには元気な姿を見せて欲しい。誰一人怪我のないように休日を謳歌して下さい」

校長が話終わり、パチパチと拍手が鳴り響くなか、疾世は微妙な顔でため息をついた

疾世
(風紀委員長からの一言とか聞いてないんだけど、どうしよ全校生徒の前で何言ったらいいの!)

予想外の展開に疾世は内心テンパっていた

そんな疾世の気持ちなどお構いなしに、校長は各委員長から一言。と話を繋ぐ

疾世
(いきなり、私から!!あーもう、こうなったらぶっちゃけ本番しかない!)

勢いよく進み出す疾世…

マイクの前に立つと、小さく深呼吸をして口を開いた…

時だった。

ガタン

疾世
「え?」

奇妙な音がして、疾世はそろりと上を見た

疾世
「あ、ヤバ…」

連休中に開かれる音楽祭。

それの準備として、そこそこ大きいくす玉が運悪く疾世の真上に吊られてあった

疾世の変な間に何人かは眉をひそめる

倉持
(どうしたんだ?)

春市
(疾世先輩?)

伊佐敷
(どうしやがった)

とりあえず、疾世はマイクだけ持ち、場所を移動しようとした…が、

ゴトン

マイクは音をたてて、地面へ落下

そのせいで、くす玉も落下

もちろん、疾世の頭の上に降ってきたくす玉は開いてしまい…

キュッ

ドシッ

バン ゴン

疾世は全校生徒の目の前で紙吹雪を舞わせながら、倒れたのだった
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