他小説

□本当の顔
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「きり丸どうだった?」


教室に戻ると乱太郎としんべヱが俺を待っていてくれた。

俺は乱太郎に聞かれたことに、実質なんて答えたらいいのか正解が分からなかったから仕方無く適当に説教されたとだけ言っておいた。

他の皆はもう食堂に向かったのだと分かった。

もう昼か。


「早く行こうよ〜」
「そうだな!」

我慢出来なくなったのかしんべヱは涎を垂らしてそう言う。俺もお腹が鳴ったのを苦笑いしてそう返した。乱太郎も頷いている。

「じゃあ行くぞ!」

俺はなんかもうさっきの出来事を頭から早く消し去りたくて早々と食堂へと三人で向かった。









――――



食堂へ向かうと長い列が廊下にまで続いていた。
俺たちは仕方無く俺、しんべヱ、乱太郎の順で並ぶ。


なんだよー、早く食いたかったのに…。

そうぼやいて居ると前に並んでいた四年生の斎藤 タカ丸さんが後ろを振り返った。


「今日のメニュー凄く人気らしくて。でもこんなに並ぶとは思って無かったなぁ」

「へぇ、そうなんすか。どんなメニューなんすか?」


俺がそう尋ねるとタカ丸さんは顔を傾げた。

「うーん、僕もそこまでは知らないかな。でも久々知くんが手伝ったんだって。」



「「「豆腐料理だ!!」」」


声を揃えて言う俺達三人に、ああそっかとタカ丸さんも納得したように頷いた。


「お豆腐料理かぁ〜ああ、早く食べたーい!!!」

しんべヱが涎を廊下に垂れ流しながら言う。乱太郎は苦笑いで廊下を雑巾で拭いてる。
ってか何処にあったんだよ雑巾……。


タカ丸さんはもうすぐだねと前に向き直った。



タカ丸さんの言う通り、どんどん前に進んで行って漸く俺達の番になった。




「はい、どうぞ!」

「ありがとうございまーす!」


久々知先輩から受け取った豆腐料理尽くしの盆を持って開いている席へ向かう。

すると後ろから悲痛な叫びが俺の耳をついた。


「ぁああああ……」


俺が後ろを振り返るとしんべヱも盆を持ちながら後ろを振り返った。


見ると乱太郎がわなわな身体を震わせながら肩を落としていた。

どうやらあの悲痛な叫び声は乱太郎が発したみたいだ。



「どうしたんだよ、乱太郎?」


俺としんべヱは今にも崩れ泣きそうな乱太郎の元へと駆けて声をかける。



「と、豆腐料理が…」
「ごめん!もう無いんだ。違うメニューならあるんだが……」


乱太郎の言葉を遮って久々知先輩が平謝りする。

乱太郎の前で終わるなんて、流石不運委員と言った所か。






――つったく、仕方ねぇなぁ。


俺は乱太郎に俺の持っていた盆をつきだした。



「乱太郎。ほら」



そんな俺を見て乱太郎はえっ、と丸い目を更に丸くする。


「き、きりちゃん?」

「俺は良いから乱太郎食えって。ほら」



俺は乱太郎に盆を押し付けた。



「き、きりちゃん……」


そんな泣きそうな顔すんなよ……。



「きりちゃんがっ、あのドケチなきりちゃんがっ」
「きり丸がっ……」


乱太郎としんべヱが驚きの声をあげる。……って……



「失礼だなお前ら!いらないならやっぱり俺が食うぞ!?」

「あっ、嘘うそ!食べる食べる〜!!
ありがとう、きりちゃん。」


乱太郎に微笑まれて俺も微笑みを返す。

周りの皆も笑っていた。




「で、きり丸はどうするんだ?」


久々知先輩に尋ねられ、うーんと首を傾げる。


「他のメニューは何があるんすか?」
「野菜炒め定食。」
「ゲッ」

俺は顔をひきつらせるも、食べない訳には行かず、渋々野菜炒め定食を受け取って席に座った。


ついてねぇなぁ……乱太郎が。
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