他小説

□本当の顔
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……周りが皆豆腐料理食ってて、俺すっごい浮いてるんだけど。


しっかし野菜炒めはなんでこんなにも野菜炒めなのか。いや、当たり前だけどな、うん。



「きりちゃん、半分……」
「きり丸」


「は?えっ、は?」


乱太郎の言葉を遮って発せられた声に俺はどきりと心臓を鳴らす。


……嫌な予感がした。




「……なんすか?」


仕方無く後ろを向くと、想像通り土井先生が居た。



「これ、要るか?」



にこにこしながら差し出してくる豆腐料理に、俺は疑いながら土井先生の顔を睨み付けた。



「いらないっす」
「あげる」
「……くっ、」



あげると言われると貰わずには居られないドケチの精神が全身を駆け巡る。



くっそぉ……分かってて言ってんだ、この人。



「………い、要らないっすから!先生が食べればい、んむっ!??」

土井先生は俺の口の中に無理やり箸で摘まんだ豆腐料理を突っ込んだ。


む、無理やりかよっ!??



「旨いだろ?」


にっこり笑う土井先生に何も言えなくてただ頷いた。


まぁ、食わせてくれたのは有り難いしな……。
あんな変態な土井先生にも、良いところはあるわけだし…。




すると突然耳元に顔を近付けた土井先生はぼそりと言った。





「………間接キス、だな」







………………







………………ブ・チッ






「ふざけんなコノヤロぉおお!!!前言撤回してやる!!!!!!!!」


この人はただの変態だ!!!!!!



「ちょっ、待てきり丸!何の話だっ、」

「とぼけんなぁ!!」



ああもう、イライラする!!



なんでこんな人が教師やってんだ、できてんだ!!




「悪かったって!冗談、冗談だ!!」


「冗談過ぎてるんすよぉお!!!!」








「どしたの?きり丸」
「さ、さぁ…?私にもよく分からないけど。まぁ土井先生に貰えたみたいだから、いっか!食べちゃお。」




乱太郎としんべヱが話して居るのを耳にして俺は怒鳴るのを止めた。


やば……今食堂にいるんだった。



今の土井先生の言葉誰にも聞かれて無いよな……?



俺は辺りをきょろきょろと見渡した。




俺の隣に座ってるのは、俺達が来る前から座っていた立花 仙蔵先輩と、その隣に座っている滝夜叉丸先輩。乱太郎の隣には斜堂 影麿先生が座っている。

土井先生の隣には田村 三木ヱ門先輩と怪士丸。






………大丈夫、だよなぁ?




……ってなんで俺が心配しなきゃならないんだよ!!!!





はぁ、と溜め息を吐いた瞬間、隣の立花先輩がごちそうさまでしたと手を合わせ席を立とうとした。






「………お前も色々と、大変だな」










…………え?




なん、だ、って……?





「た、立花先ぱっ……!?」




今のは何かと、聞こうと顔をあげるも、もうそこに立花先輩の姿は無かった。



「きりちゃん?立花先輩ならもう行ったよ?何か用事でもあったの?」

「え、あ、いや……なんでもない。」







今の………まさか、なぁ……。
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