他小説

□本当の顔
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「ふぁあ〜…」

何時ものように眠くなって目を擦りながらうつらうつらと土井先生の声だけ聞く授業中。

俺の欠伸が聞こえたのか、土井先生はくるっと振り向いた。


あ、やべっ


「きり丸!そんなに私の授業がつまらないのか…?」

「あ、え、つまらなくないっす!全然」

俺は首を横にぶんぶん振って土井先生の言ったことを否定する。

土井先生はそんな俺の様子を見てまた授業へと戻る。


……ふぅ、あぶねぇあぶねぇ。


俺は先生を見つめた。

皆さん騙されないで下さい!!あんなの演技です……そう、演技だったんだ……。本当の先生はもっと………




ヤバいんだ。つか怖い。

おかしい、キャラ崩壊してる。っていうか誰これ状態なんだよ。


いずれ分かるよ。………先生の本当の恐ろしさってやつが。












―――・・


授業の終わりを告げる鐘が鳴る。

俺は一刻も早くこの場所から逃げたくて、立ち去りたくて立ち上がった。


「きり丸。さっき欠伸して私の授業を聞いてなかった罰として、来なさい」

げっ

俺は思いっきり顔をひきつらせながら土井先生の後について行った。


「きりちゃん頑張って」

後ろで乱太郎達の声がする。

くそぅ、何も知らないで。









――――
俺と土井先生は薄暗い部屋の中へと足を踏み入れた。

部屋には幾つもの紙束が積まれて置いてある。

部屋に入った途端、土井先生の雰囲気が一気に変わる。



「…きり丸〜!」

「わっ、ちょっ!!」


俺に無理やり抱き着いてくる先生。

あーあ、……始まったよ。


「きり丸、さっき授業聞いてなかっただろ、傷ついたぞ!でも許す可愛いから!!」ぎゅうう〜)

「止めてください、土井先生!」

「無・理。」


あああああ、ふざけんなぁ!!

俺は土井先生を思いっきり睨んだ。

でも土井先生はびくともしない。
それどころか余計にニヤニヤし始めた。


「怒ってるきり丸も可愛いな!」
「止めてください!訴えますよ!他の先生に言い付けます!」
「きり丸はそんなことしないからな」

………ズルい。

確かにしない。正解に言えば、出来ない。
俺は土井先生に世話になっているしそれに何より土井先生のことを家族として大事に思って居るから。
けどけしてそれは愛だの恋だのそういうもんじゃない。


なのに

この人は



「好きだよきり丸」

そう言って笑う彼。


あーもう!!

ずっと前の…前の土井先生どこいったんだよ!!!

前まではずっと親子の様に兄弟の様に接してくれた土井先生を思い出して頭が痛くなる。

どうしてこーなったんだよっ。


なんて俺がごちゃごちゃ考えて居ると土井先生の顔がいつの間にか目の前に。


「うわぁっ!!!!」


俺は驚いて土井先生を押すける。

土井先生はムッと眉を潜めた。

「こらっ!キス出来ないだろ!」
「するなぁああ!!!!!」


俺は完全にぶちギレて土井先生のお腹に思いっきり体当たりして部屋を飛び出し逃げた。

後ろでグハッと先生の唸り声のような声がしたけど無視した。


自業自得だっつーのっ!!!!
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