他小説

□歯車
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―――今頃何処にいるのか。


何を話しているのか。





私には知る権利さえない。





どうして立花 仙蔵なんだ?

二人で何をしている?

どうして――――――――






疑問は尽きない。






“きり丸 愛してる”






私の想いは伝わっているか?





ああ……さっき授業で会ったばかりなのに


会いたい





抱き締めたい

キスしたい




嫌がられていると分かっているのに


困らせていると分かっているのに




それでも止められる筈のないこの想いはどんどん溜まって溢れていく。




「きり丸………」



独り自室で晴れた空を見つめる。

キリキリと胃と心臓が痛い。








“きり丸”



“立花先輩!”









………ああ、分かってるさ。






これは紛れもなく嫉妬だと―――――

















―――――




「よし、ここにしよう。」


「はい」



立花先輩と俺は人のあまり近寄らない倉庫の中へと足を踏み入れた。

ギシッと足を中へと進める度床が軋む音がする。
中は埃っぽくて何も無い。ただあるのは光を灯す蝋燭だけだ。



立花先輩は奥まで行くと立ち止まりギシッと音を立てながら其処に座った。


「きり丸も座るといい、ここに」

立花先輩は床をトントンと叩いてみせた。


俺は言われた通り其処に座る。





「………………」





どうしよ……何から話せば良いんだ……?



何を話せばいい?




聞くのが先か?






俺が口ごもって居ると、立花先輩は俺の目をじっと見つめて口を開いた。






「……………アルバイト、しているんだってな」


「え……あ、はい…」



アルバイト……?



俺が立花先輩の意図が分からずポカンとしているも、先輩は止めることなく話を進める。



「大変だな。あまりやり過ぎないようにな」


「…はい」


「そういや文次郎達も確か…」

「立花先輩」


「………なんだ?」





「……聞かないんすか?」

「何をだ?」

「……僕が立花先輩に話があるって呼んだんすよ?その話を」



「……ああ…別に言いたくないなら言わなくてもいい。お前さっき凄く言いたく無さそうな顔していたぞ?」

「………ッ」


俺は真剣に見つめてくる立花先輩の目を耐えきれずに逸らした。









………言わないと……




何の為に立花先輩とここに来たんだよっ……!!!!




俺ははぁと息を吐いて立花先輩の目を見つめ返した。






「……立花先輩は、……立花先輩がこの前言った言葉、覚えてますか?」



声が震えた。





立花先輩は一瞬目を丸くした後、すべて何かを悟ったように目を細めた。





「……ああ、やはりその話か」
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