他小説
□土井せんせーがきり丸を連れていく理由。
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―――ある日
「もうすぐ授業だよ、皆早く席に着いて!」
何時ものように一年は組で朝ぎゃあぎゃあと喚いているともうすぐ授業の時間になると庄左ヱ門が叫んだ。その後すぐヘムヘムが鐘を鳴らした音が聞こえた。
皆は慌てて席に着く。
「………土井先生遅いね」
ぽつりと乱太郎が言った。
皆もうんと頷く。
「どうしたのかなぁ?」
「土井先生の事だからなんか企んでるんじゃねーの?」
「えー土井先生そんなことしないでしょー」
「分からねぇよ?兵太夫」
「何できりちゃん得意気なの」
ぎゃあぎゃあとまた騒がしくなる教室。
「皆、静かに!」
庄左ヱ門が言い、皆口を閉じ息を潜めた。
タッタッタッタッ………
聞こえてくる足音。
「庄ちゃん、足音…」
「しっ!」
伝える乱太郎に分かってると庄左ヱ門は自分の口に人差し指を立てる。
タッタッタッタッタッタッ…
ガラッ!!
「きり丸ッ!!!」
「「「土井先生!!!!!!!」」」
荒い息を整えながら叫び入ってきたのは土井 半助だった。
皆一瞬にして目が丸くなる。
その中でも一番驚いていたのはきり丸だった。
「ど、どうしたんスか!?何でそのカッコ……」
「訳は後で話す!今すぐ帰るぞ!!お前も早く着替えて来い!!!」
「ぇええええ!?」
憤る半助にテンパるきり丸。
一年は組の皆はその様子をぽかんと見つめていた。
「何があったのかな…」
「さ、さぁ……」
ヒソヒソ話する伊助と三治郎。
そんな中首を傾げる人が1人。
「ほらきり丸行くから早く着替えて…」
「あ、はい、ちょっと待って……」
「………なんできり丸も行くんですかぁ〜?」
その言葉に固まる半助。
半助もきり丸も一年は組全員も一心にして言葉を発した方へ目を向ける。
「…き、喜三太、」
明らかに動揺している半助。
そんな半助を他所に、どんどん疑問を投げ掛ける喜三太。
「だって何時もきり丸と一緒に帰ってるでしょ?だからなんでかなぁって思ったんです。大家さんとの事なら態々きり丸連れていく必要なんてないのに」
本人には悪気はない。ただ疑問に思った事を聞いただけなのだ。
でも半助は有り得ない程冷や汗を垂れ流していた。
そんな半助を救うかの如く乱太郎が助け船を出す。
「土井先生はきり丸のこと本当の家族だと思ってるしあの家は二人の家だから。」
「なるほどぉ」
納得したように頷く喜三太と一年は組一同。
半助はほっとした笑みを浮かべた。
…のはつかの間、半助は自分の顔をじっと見つめるきり丸にうっ、と渋い顔をした。
(……へ、変に思われたか…?)
「じゃあちょっと僕着替えて来まーす」
「あ、ああ、早くしろよ」