他小説
□愛が溢れる。2
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放課後なので人が途絶え静まる食堂で二人の少年が肩を並べ溜め息を吐いていた。
因みに食堂のおばちゃんも出掛けていて居ない。
「「はぁあ……」」
その溜め息は静かな食堂に吸い込まれていく。
「ねぇ、きり丸…」
「なんだよ……金吾」
肩を並べ席に座った二人は机の上のお茶だけを見つめた。お茶の湯面に写る自分の顔をただひたすら見つめる。
「あのさ…本当にもう……」
「うん」
「だからさ……っと、」
「分かってるって」
「「カッコいいよなぁ………」」
顔を赤らめながら言う。
「だよなぁ、本当にカッコいいよなぁ…」
「なんだ……分かってるんじゃないのさ」
二人とも思い浮かべる“カッコいい人”は違う人物であるものの気持ちは通じていた。
そうしてまた深い溜め息を吐く。
けして苦しさや悲痛な溜め息ではなく幸せの溜め息と言ったところだ。
この二人もまた同じような境遇である為よくこうして話合ったりしていた。
「なんであんなにカッコいいんだよ……」
「本当だよね……。そう考えるとさ、僕達って幸せだよね」
二人してのほほんとノロケオーラを放ちまくっている。
「なんなんだよあのノロケっぷり!!超イラつくんだけど!!?」
「お、落ち着いてください三郎次先輩っ!!!!;」
「落ち着いて居られるか!!ああもうイラつくなぁ!!!!」
三郎次と伊助は目の前で溜め息を吐いてノロケている二人の恋人達の居る部屋へと火薬委員会の用事で足を運んだのだが、ある意味で入りずらかったのでこの二人に頼みに食堂へと足を運んだらしい。
だが当の本人達もこんな様子でますます三郎次のイライラをMAXにさせる。
「土井先生……」
「戸部先生……」
ブチッ、と音がした。
「おい!!お前ら!!!ノロケてないで早く助けろよ!!!」
痺れを切らした三郎次が叫ぶ。
そんな三郎次の方を、目を見開いてきり丸と金吾は見つめた。
「あれ、三郎次先輩?」
「どうしたんすか?…っていうか何を助けるんすか?」
二人とも漸く我にかえり首を傾げる。
「だから!土井先生と戸部先生が!!火薬委員会が!!!お饅頭が!!!!」
「いやいや三郎次先輩意味分かりませんよ通じないですよそんなんじゃ!!!;」
「土井先生!?!?」
「戸部先生!?!?」
「いやそこだけに反応しないで!??;;」
伊助のツッコミが食堂に響き渡る。
相変わらず三郎次は足をバタバタさせたりと暴れている。そんな三郎次を押さえ付け?て伊助は二人に言った。
「僕達火薬委員会の用事で土井先生に用があったんだけど職員室に行ってみたらなんか土井先生と戸部先生が話し込んでて。あ、で、お饅頭って言うのはお饅頭と一緒にお茶も飲もうってことでそのお茶を食堂まで取りに行くので喧嘩しちゃって。だからきり丸と金吾にお茶を持っていって欲しい、ってことなんだ。」
伊助はあえて、話し込んでいた内容を言わなかった。そこは伊助なりの気遣いというかなんというか。
「じゃあ俺達行くよ!お茶届けに」
「うん。あ、お菓子何か……、お饅頭あるんだっけ」
二人は伊助の話を聞いて直ぐ様行動を開始した。
お茶を持って。
「んじゃ…」
「「行ってきま〜す!!!」」
「あ!待って!僕達も……ほら、三郎次先輩何時までやってるんですか行きますよっ!!」
「え、あ、ああ、うん。」