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□変わらないもの
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「もぉおおお!!ゾロ!!聞いてよ!」


最近、我が船の航海士はご機嫌斜めらしい。
海のなかに潜ってから数日、毎日のようにこのやりとりが行われている。

「……毎回聞いてるじゃねぇか」
「もう、本当何なのよ!」

……こちらの言い分は聞く気が無いらしい。
サンジに助けを求めようと視線をやってみるが、薄情にアイツはキッチンに消えやがった。

しょうがないかと、瓶の酒を煽ってナミを見やった。

「で、何があり得ないんだ?」

ナミの目がキラリと怪しく光る。
そのたびにゾロは、聞きたくないと思うが、聞くまで逃がして貰えないため、堪える。



「あの女よ!!!!!あの女帝!」



ゾロは深くため息をついた。
出航直後のルフィの発言。
そこから分かった、2年間蛇の女帝と同じ島にいたという事実。
うちの女王さまは、それが気にくわないらしい。

「何よ!ウインクなんかしちゃって!意味わかんない!」
「……」
「ていうかね、ルフィもルフィなのよ!仲良さげにして!アイツはッ」

ナミは、今までの勢いを殺し、俯く。


「……ルフィは、あたしのなの……ッ」


……2年前からコイツらは変わらない。


「ルフィは人気あって、沢山の人に好かれるわ。男女問わずに。それでも独り占めしたいって思うのはいけないことなのかな……?」
「……ナミ」


変わらねぇ。
相変わらず不器用で、我が儘で、優しい。

「ナミ、俺は少なからずルフィはお前を"特別"扱いしていると思う」
「……分かってる」
「女帝の求婚も断ったらしいし、見てみろ」

サニーの頭に目をやる。
いつものルフィの特等席。


「アイツ、あんな目をするんだぜ?」


毎回、ナミと二人きりで話していると、時々ルフィの視線を感じる。
熱い、燃えるような視線が、ナミに注がれるのを。

ナミはハッとして目をそらす。

「ま、そういう事だ。……ちゃんと話してみろよ」
「ナミさんの想ってること、全部話してみたらどうですか?」

いつの間にか背後に立っていたサンジが、ラベンダーの紅茶と、仄かにブランデーの香りがする紅茶を置いた。

「ラベンダーには鎮静効果があります。落ち着いたら、ルフィの所に行ってやったらいかがです?」

ナミは一口ラベンダーティーを飲むと、ほぅっと息をついた。
ぽろりと、雫が頬を伝う。

「……ッありが、とう」

ゾロの武骨な指が、ナミの頬を撫でる。
サンジはニコリと笑う。

それにまた涙が込み上げて、さっきまでのわだかまりがすぅっと溶けて消えた。
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