海賊

□愛してると叫ばせて
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海を渡るサニー号船上 クルー達は今日ものどかにそれぞれの時間を 過ごしていた。

二人の屈強な男達の喧騒を除いては。

またいつもの痴話喧嘩だろうと、この船の航海士はパラソルの下からその方向に目をやるだけで、ひとつため息をついて再び海図に目を落とした。



「チョッパー!!すぐ来てくれッッ!!」

しかし、その平穏は、この叫びによって崩された。

急いでクルー達が船尾に向かうと、そこにいたのは 顔面蒼白のゾロと、眠るように目を閉じているサンジだった。

「サンジ!!ゾロ、どうしたんだ!?」

船医・チョッパーは直ぐにサンジの首筋に手をあてる。 静かに伝わる脈動に、ほ、と安堵のため息を溢した。

「…打ち所が悪かったみてェだ。そこの樽にぶつかって気を失っちまった」

ゾロの視線の先のぶつかったであろう樽は、ただの木くずと化していて、その時の荒々しさを安易に想像させた。

今までの喧嘩で、こうはなったことはない。 端から見れば激しい戦いに見えるが、本人達にとっては軽い戯れ程度なのだ。 だからこそ、ゾロの動揺は激しかった。

「どうしてこうなったんだ?」
「…あー…」

疑問を問い掛けると、ゾロはうつ向いて言葉 を詰まらせた。 クルー達は不思議そうな顔をしてゾロの言葉をまった。

「…いや、別に大したことじゃねぇんだけどよ、」

――何時ものように昼寝から起きたらサンジ が横にいて、俺の頭を撫でてたんだ。
――そこまでは別に良かったんだ。だけど急 にアイツが真面目な顔で 『愛してるって叫んでいい?』って聞いてくるから…

「アンタが恥ずかしくて居たたまれ なくなって、喧嘩になった…って」

「「「「「ノロケかよ」」」」」

「だッッ!!違っ!…アイツ、様子がおかしかったんだよ!!いつもはあんなこと言わねぇのに…」
「いや、じゃあ喧嘩すんなよ…」

ごもっともな意見を言うウソップを華麗にスルーして、取り敢えず、サンジを医務室へ運 ぼうという結論に達した
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