キミは、太陽


□7.炎と風
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「カゼカゼの実」は、文字通り、風の力を使えるようになる。

風になれる。
操れる。
呼べる。

だが、弱点があった。

「…風だけじゃ、弱い」

直接的な攻撃に結び付かない。
だから弓を習った。
それでも、風は風でしかないのだ。

「すず」
「エース!」
「何だよ、急に」
「スッゴいこと考えたの」

やって来たエースの手をひく。

「あのね、あれやって。
『炎戒』」
「……………?」
「いいから!」

すずの顔を見下ろすエース。
その顔は、なんだかとても嬉しそうだ。

「分かった」

あのときのように、すずは、エースの背中にまわる。

『炎戒』

エースを中心に、炎のサークルができた。

『旋風』

その炎に、すずもまた、風の円を合わせる。
炎は瞬く間に大きく、激しく燃えた。

「これって…」
「すごくない?
わたしの風の力で、エースの炎が強くなるの!」

それだけでは弱いけれど。
風に煽られた炎は、大きく猛る。
この実を食べたときに、もしかするとは想っていた。

「やべーな!
すげーよ、すず!」
「ふふ」

『こらー!エース!!
すず!!船を燃やす気か!』

周囲に燻る炎。
兄たちがバケツ片手に走ってくる。

「わー!怒られる!!」
「すず、逃げるぞ!」

『すきま……』

その声にすずは風になろうとしたが、エースに抱きかかえられた。
強い、太陽の匂い。
鍛え上げられた、その体。
海楼石の錠をはめられたかのように、力が抜ける。

エースは甲板を駆け抜け、そのままストライカーに飛び乗った。






「すごーい!
エース、気持ちいいね」

ストライカーを操るエースの背で、すずは嬉しそうな声をあげる。

オレンジ色のテンガロンの向こうの、青い海と、青い空。
キラキラ光る、波しぶき。

大好きな人の、背中。
同じ、白ひげのマーク。

「明日から、エース、遠征でしょ?」
「親父の縄張りで、ドーマってやつが、なんか暴れてるらしいからな」
「そっかぁ」

(遊騎士ドーマ……)

どんどんその時が、近づいてくる。
強く、ならなきゃ。
守りたい。
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