キミは、太陽


□7.炎と風
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自分の肩に置かれた手に、急に力がこもった。
エースは、すずの顔を見る。

「どうした?」
「なんでもないよ」

すずの「何でもない」は、大抵、何かあるときの「何でもない」だ。
エースはストライカーを止めると、すずと向き合う。

「さみしい?」

急にそう言われて、すずは、驚く。
初めて、エースがそんなことを聞いてきたからだ。
エースの遠征なんて、しょっちゅう。
でもその度に、戻ってこなかったらどうしようと、心のどこかに常にある。

「…さみしいよ」

手の届かないところで、何かあったらって、いつも思う。

「そんな顔すんな、すず。
すぐに戻るから」

太陽みたいに笑うエース。

「じゃあ、約束して。
帰ってきたら、またストライカーに乗せて」
「ああ、いいぜ」

そして、ギュッと抱き締めてくれた。
強い、太陽の匂い。





風が煽り、猛る炎。
そしてエースに抱きかかえられたすず。
二人の乗ったストライカーは、海を走っていく。

「マルコー、あの間には入れねぇって」
「急になんだよぃ」

その様子をじぃっと見ていたサッチが、マルコに話しかけた。

「お前も、わかってんだろ??
すずちゃんはエースにベタ惚れだし、エースも……」
「それがどうしたよぃ」
「……だから、いい加減よ。
妹と弟の恋を応援してやろうぜ!」

ドンッと、マルコの前に酒瓶が置かれる。
あのデート以来、マルコはすずを避けていた。

「サッチ隊長、マルコ隊長がわたしをさけてるの。
あやまりたいのに」

可愛い妹が半泣きで訴えてきたのは、つい先刻。
笑顔に弱いが、泣き顔なんて見せられたら、いてもたってもいられない。
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