ゼルダの伝説 時のオカリナ ソウル・リベレイター
□第20章
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扉を開けると、狭い通路に出た。しかも途切れてしまって道がない。
見れば、そこはさっき仕掛けを作動させた塔のある部屋で、丁度3階の部分だった。
そしてちらっと見えたが、壁にあの三角形のマーク。ここがもう1つの水位を操作する場所か。
となると、シモンが取る行動は、ただ1つ。
〜♪…〜♪
もう何回吹いただろうか。大人になってからも結構吹いた気がする。目を瞑ってでも吹けるぞ。
ザァァという音と共に水位が上がる。毎回思うのだが、この水はどこから来てるのだろう。
そんな事を考えているとあっという間に足元まで水が上がった。これで2階は水没してしまったことになる。
これでアレディに言われた水位は全て上げた。後はアレディと合流して、ゾーラ族探しだ。
「ん…」
シモンが部屋を見ていると、中央にそびえる塔、そのさらに奥に扉が見えた。
「あそこに入ろう」
「ちょっと、アレディと合流しないの?」
「ちょっと中を調べるだけ」
塔を経由し、扉に手をかける。
「ん?」
ここまで来てもう驚かないつもりだったが前言撤回。シモン達はさっきよりもへんてこな部屋に入ってしまった。
中央に大きな段差がある。そこは傾斜が激しく、降りようとすると滑っていってしまうだろう。それだけではなく、水がかなりの勢いで流れており、登るのはまず不可能。流れている水も奈落へと落下していっている。
それだけでは終わらない。段差のすぐ下に、足場が行ったり来たりしている。向こうの坂には絶え間なく段差が現れては奈落に消えていた。
「……カラクリ屋敷ね」
まったくもって同感だ。誰がなんの目的でこんな神殿作ったのだろう。神殿ってもっとこう、神聖な所じゃないのか。
だが、仕掛けの意味が分かってない訳ではない。流れてくる足場に、丸型の印が見えたのだ。
「先に進もう」
シモンは段差を降りて、足場に着地した。
フックショットを向かい側の足場にある印に発した。何とか足場の上に立つ。ぼやぼやしている暇はない。足場は奈落へ落ちている。
急いで次の足場に放つ。足場は移動しているがうまく刺さった。一段上の足場へ。そこから脚力を活かして大ジャンプ。
見事シモンは、向こう側に着地出来た。
「さっすがシモン!」
「はあ…疲れた」
少し呼吸を整えて、扉を見る。まだこの奥があるのか。
もちろんシモンは引き返すつもりはない。
ドアノブを握った。
「……ここは…?」
まだ何か仕掛けがあると身構えていたら、拍子抜けしてしまった。
そこはだだっ広い空間の割には何もない場所だった。中央に一本の枯れた木が生えている事以外、特に目立つものがない。
今までの雰囲気とは違う部屋に、シモンは息を飲んだ。
「不思議な場所…」
「気持ち悪いわね…何もないじゃない」
一歩踏み出すと、パシャリと水が跳ねた。
「……?」
シモンの目線が動く。彼の顔は静かに波打つ水面の、さらに向こうの壁際に向けられていた。
靄がかかった境界の中、なにかがキラリと光った。同時に水面を蹴立ててこちらに向かってくる。
「散って!」
シモンの声。シモンとアルマは両脇に跳んだ。
ひゅっと音がして、銀色の筋が走った。空気を切り裂く。シモンは間一髪のところでかわしていた。
地面で回転し、体勢を直す。
シモンは右手にマスターソードを用意していた。
「誰だ!!」
攻撃してきた相手は振り向かない。ただ静かにその場に佇んでいる。真っ白な空間に、相手が着ている喪服のような黒い服が映えた。
相手も剣を持っていた。長くスラッとした銀色の刀身をもつ剣。シモンの持つマスターソードに似ている。
「んっ!?」
シモンは剣を凝視した。
刀身にトライフォースの紋章が刻まれている。マスターソードにも同じ物が刻まれていた。
「な…」
驚いていると、その人物が振り向いた。
シモンは言葉を失ってしまった。
「……!」
さらさらとした銀髪…というより、プラチナブロンドが煌めいている。肌は驚くほど白く、それでいて目は血液がそのまま映ったように真っ赤に光っていた。
シモンが驚いたのはそこじゃなかった。
「シモン…!?」
言葉を詰まらせているシモンの変わりに、アルマが叫んだ。
目の前の人物は、シモンと見た目がまったく変わらなかったのだ。