ゼルダの伝説 時のオカリナ ソウル・リベレイター
□第5章
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「わあ…」
シモンとアルマのコンビはお決まりの声を上げた。目の前にはこれまで見たこともない巨大な山がシモン達の前にそびえ立っている。山頂には相変わらず薄い雲が伸びている。
「カカリコ村にいたときはそうでもなかったけど…近くで見たらすごいなぁ」
「気を付けてね。今も活動してる火山らしいから」
それが一番の不安であった。デクの樹様から聞いた火山というのは時折、山から火より何倍も熱いマグマというのが溢れてくるらしい。火より熱いだなんて想像できない。
「でもエリックがいるんだ…多分」
シルファが言っていた赤い髪の男の子…。それは本当にエリックなのだろうか?
「さ、いつまで立ち往生してるの!行くわよ!」
「う、うん」
シモンは半ば強引に緩やかな傾斜の山道を歩きだした。
「……にしても本当デカイわね」
アルマが率直な感想を漏らす。
「おまけになにもないし…山ってつまらないのね」
「あ、あはは…」
「もっとさあ…緑が欲しいわね!コキリの森みたいな!」
「コキリの森かぁ…」
なんだかすっかり遠いものになってしまったような気がする。
みんな元気かな…僕のこと探してるかな…
……大丈夫…きっとレオルドがうまくやってくれてる。信用できないけど。
「……ん?」
突然アルマが前方に飛んでいった。
「シモン!ちょっと来てよ!」
「ま…待って……」
アルマは飛んでるからいいけど…
そんなことを考えながらなんとかアルマのもとについた。
「はぁ…はぁ…どうしたの?」
「これ見てよ」
顔を上げるとそこには巨大な「穴」があった。
正確には洞窟だ。かなり大きな洞窟が口のようにぽっかり開いている。暗くて奥の方までよく見えない。
「洞窟?」
「かなり大きいわよね。まあだからってどうということじゃないけど…」
確かに見る限り単なる洞窟だ。
「じゃあ先に行こう」
「そうね」
『ギャーーーーーーーーーーーー!!』
「ギャーーーーーー!!」
シンクロして飛び上がる。息ピッタリ。
それはどうでもいい。問題は『洞窟からいきなり叫び声が聞こえた』こと。
二人は恐る恐る振り返った。洞窟からはなにも聞こえない。ただ闇が溶けているだけだ。
「いま…洞窟から…」
「聞こえたわね…」
「……」
「ホギャーーー!!」
「ひっ!?」
ホギャー…ホギャー……
と、洞窟内に反響する、断末魔。
「……どうする?」
アルマが訪ねる。
「…そんなの…」
シモンは透き通った瞳をまっすぐ向けた。
「逃げよう!!」
「助けよう!」
そしてアルマとシモンは別方向に走り出す。当然シモンは洞窟まっしぐら。
「シモ……あ〜!もう!」
アルマは迷いつつシモンを追いかけた。アルマとしては面倒事には首を突っ込みたくなかったが…
「シモン待って!」
「……ッ!」
走っていたシモンが突然足を止めた。
「きゃ!いきなり止まんないで!」
「……いや…そこ…」
シモンは目を丸めている。なんだ?
「も〜…なに…って…」
アルマは言葉を詰まらせた。
そこにはぶるぶる震えている…『岩』があった。
……いや、うん。岩。どこをどうみても岩。なんの変哲もない見慣れた土気色の岩である。
たださっきからぶるぶる震えている。岩なら森の回りによく落ちているが、こんな落ち着きのない岩初めて見た。
「えー…えーと…」
アルマは戸惑っている。当然だ。シモンも戸惑っているのだから。
すると突然、
「やめるゴロォ〜!オイラは食べても美味しくないゴロォ〜!」
「喋った!」
真っ先に反応したのはアルマ。
じゃなくて岩が喋ったぞ。ガタガタと震えも増している気がする。
「…あの…」
シモンが岩に向かって話しかける。岩はビクッと震えた。
「ひぃっ!?」
「動いた!」
またアルマが突っ込みをいれる。
すると岩はモゾモゾ動いて起き上がった。
「こ…子供?お前たち何なんだゴロ…?」
岩らしきものはつぶらな瞳をシモン達に向けている。瞳の奥は震えていて明らかにシモンを怖がっている。
「あの…君は?」
「ゴロ…?お前たち悪いやつじゃないゴロ?」
よいしょっと起き上がる。よく見れば目の前の生物は不思議な外見をしていた。
茶色い肌に低い身長。そして外見からは不釣り合いな、真ん丸の大きな目。
「お、オイラ…ちょっと用事があってこの洞窟に来たんだゴロが……途中怖い目にあって…」
「怖い目?」
返すと大きな目を潤ませて声をあらげた。
「そうゴロ!!突然、岩が落ちてきたり何かがバクハツしたりビーモスに狙われたりアモスに追いかけられたり…散々だったゴロ!オイラ怖くて怖くて…ずっとここで丸くなってたゴロ……」
なんだかよくわからないがとりあえず怖かったのは分かった。
「……で、君たちはなんでここにいるゴロ?」
「あ…僕たちはこのデスマウンテンに人探しに来てて…」
「こんなところまで?はぁ〜、変わってるゴロねぇ。でも子供がこんなところに危ないゴロよ」
「ふんっ!余計なお世話よ!」
「ひょえ!!」
アルマがズズイと突き出る。
「私たちはね、この子のお兄さんを探してるの!あんたに構ってる暇ないのよ!!シモンッ!行くわよッ!こんな場所にいたらエリックがどっか行っちゃうわ!!」
「…エリック?」
ゴロ?と首をかしげる。
「エリックっていう…もしかして赤毛の男ゴロ?」
「!」
「その男、こないだオイラのとこにき」
「エリックを見たの!?どこにいるの!?」
シモンはその生物の方をつかんでグワングワン揺すっていた。
「おおおおちつつ、くゴロロロロ!!」
ハッとして渋々手を離した。
「と、取り合えず話は聞くゴロ。オイラ達の町に来てみるゴロ。案内するゴロよ」
「あっそ。私はアルマ」
「僕はシモンだよ」
「ご丁寧にありがとーゴロ。オイラはゴロン族の『デッド』ゴロ」