ゼルダの伝説 時のオカリナ ソウル・リベレイター
□第9章
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数時間前…
玉座の間にて二人の誰かが話をしていた。二人とも体が青くて、魚のヒレのようなものがついている。もう片方はスラリと細身だがもう片方は大きくてとても貫禄があった。
なにしろこの太ったもう片方がここ『ゾーラの里』を統べる王なのだ。
ゾーラの王が口を開いた。
「アレディ。お主がゾーラの王となる日は近い。忘れてはならぬぞ」
「はい。父上」
「ふ…まあお主なら心配はあるまい。これでようやく心置無く引退できる」
「ご安心ください。父上の跡は私が継いで、ゾーラを治める王として、ゾーラの里を正しき道へ導きます」
低身だが細身のゾーラがいうと太ったゾーラの王が微笑んだ。
「頼もしい限りだ…ん?」
王が辺りを見回す。突然地面が揺れ始めたのだ。
「じ、地震か!?」
「う…」
結構激しく揺さぶられたが、すぐに収まった。
「ふう…びっくりしたぞ…」
王が安心して一息つく。
その瞬間だった。
「くすくす。かたっくるしい王子様ね」
「!?誰だ!!」
振り返るとそこに女が立っていた。青い髪の毛はゆらゆら揺らめいていて青い瞳の中ではドス黒い闘志が燃えている。
「お、お前は…」
「……さっきは苦労したわ。目の前に『時の勇者の生まれ変わり』がいると思うだけで」
女の姿が消えた。と思った瞬間、いきなり目の前に現れた。
「八つ裂きにしたくてしたくて、全身の血が煮えたぎってくるのよ。分かる?この感覚」
女の声は地面から響く音のように低かった。恐ろしさのあまり、アレディは素早く退いた。
……この女は危険だ…。
女が続けて喋る。
「ま、あのガキはガノンドロフ様復活の為のキーになるからって私のご主人様は言ってるけど。だからしばらく泳がせるわ。……さてと」
女の目線がアレディに向く。
女がにっこりと微笑んだ。
「水の精霊石はどこ?」
「水の精霊石…?ゾーラのサファイアのことか!?」
王が言うと女がギロリと睨んだ。
「あんたには聞いてないわ。ねえ坊や。大人しく教えてくれたらかえってあげる。……でも抵抗したら殺すわよ」
「……ッ!」
「……あっそ。じゃあ死ね」
女がアレディに向けて手をかざす。
その時だった。
「うおおーーーー!!」
「きゃっ何よ!」
「みんな!?」
ゾーラの里の仲間が押し寄せてきたのだ。あっという間に玉座の間がゾーラの民によって埋め尽くされる。
「きゃあぁっ!!冷たい!!」
「王子!!早くお逃げください!」
「し、しかし!!」
「王子、我らは大丈夫です。あなただけでも助かってください!!」
「駄目だ!そんなこと決して……」
「王子、こちらへ!」
ゾーラの民の一人がアレディを抱き抱える。
「は、離せ!命令だぞ!!」
「王子、すみません…」
玉座の間がどんどん遠くなっていく。ゾーラの民が女に向かってぎゅうぎゅうになっているのが見える。
「アレディ!!……お前はゾーラの誇りだ!!」
王が叫ぶ。アレディは無我夢中で振りほどこうと必死だった。
「あらら…あー……」
突然、群衆の真ん中から光が放たれた。青白く、冷たい光だ。
「父上ーーーーーー!!」
ゾーラの里は白い闇に呑み込まれた。