ゼルダの伝説 時のオカリナ ソウル・リベレイター
□第4章
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シルファが上った階段の先には大きな屋敷があった。ハイリア文字で書かれたプレートが目にはいる。茶色い外壁を持つ家で、シモンの家の3倍はありそうだ。
彼女は鍵を使って開けた。
「どうぞ。私以外に誰もいないから」
一応「お邪魔します」と言った。中も綺麗でリフォームでもしたんだろうか。
「今作るわね。適当な場所に座ってて
」
シルファは走って台所へ。区切られているわけではなく、続き間になっている。
言われた通り適当な場所……リビングの椅子に座って改めて中を見回した。広いというか天井が高い。贅沢な作りだ。二階建てらしく、ベッドがちらりと見える。レオルドが見たら泣くな。
「別に私が買った訳じゃないわ」
いつの間にか、シルファが来ていて、なにやら赤く透き通った飲み物を入れていた。
「私の先祖…インパ様が買われた屋敷なの。ここには代々、村の長が住むようなってるのよ」
シモンはふぅんと受け流すところだったが飲み物をこぼしそうになった。
「え…シルファってここのおさなの?」
「そうよ」
シルファは平然と、
「そんな対したものじゃないわ。ハイラル王に仕えて、村の安全を守るだけだもの」
シルファはなんか紫色の飲み物を冷やしたものを飲んでいた。動きにも台詞にも、よどみがない。
よくみればシルファはエプロンを着けていた。柄にあわない可愛らしいフリルのエプロンだが何故か似合う。
「ああごめんなさい。すぐ作るわ」
といって再び台所。包丁やら鍋やらを取り出している。
この家のキッチンは、四、五人が同時に入っても楽々動けるスペースがある。村長の家はなんでもかんでも広い。
あっという間に食材が切られ、鍋やフライパンに投じられる。手慣れたもので流れるように動いていた。スパイスのツンとした香りが漂ってくる。
テーブルの上に皿が次々と並べられる。牛肉の煮込み、春巻き、サラダ、パンとスープ。
「すごい…」
アルマは感心していた。シモンも目の前のごちそうに唾を飲む。空腹なもんだからより美味しそうに見える。
「さ、食べましょう」
シルファがエプロンを外す。みんな座っていただきます。あいさつは大事だとエリックに教わった。
「……美味しい!」
卵スープを一口飲んで一言。純粋に美味しい。
「良かったわ」
シルファは微笑みながらスープをすすっていた。とても優雅に見える。
「シルファは料理できるんだね」
「簡単なものばかりよ。それでいいなら好きなだけ食べて」
「うん!」
無邪気に答え、春巻きにパクつく。パリパリしてて美味しい。
ふと、シモンはエリックの作ってくれたデクの実の煮込みを思い出した。
『ほーら、出来たぞ!』
『うっわー!美味しそうー!』
『シモン、デクの実の煮込み大好きだもんなぁ』
『いただきまーす!…おいしー!』
『はは、好きなだけ食べろー』
(……エリックの作ってくれたデクの実の煮込み……食べたいな…)
そう思うと急に心細くなってきた。胸が締め付けられるように苦しい。
「食べないの?」
ハッと我に帰る。いつの間にかスプーンが止まっていた。
「あ…」
せわしなくスープをすする。もたついてうまく飲めない。
「お兄さんに会いたい気持ちは分かるわ」
「え?」
これはシルファ。シルファはシモンを真っ直ぐに見ていた。
「でも食べておきなさい。腹が減っては戦はできぬってね」
見抜かれていたのか。なんか彼女の前では隠し事が出来ない、そんな風に思えてきた。
「…うん」
シモンは小さく返事をして牛肉にがっついた。
「ふわぁぁ〜お腹いっぱい〜」
いくら食欲がなかったとはいえ空腹であることには変わらない。もう腹がはち切れそうだ。
「お粗末様でした」
シルファはすでに後片付けをしている。なにか手伝おうかと思ったがシルファの手際がよすぎて暇がなかった。
暇なので窓の外を眺めた。さっきの人、まだ鶏に逃げられてる。
「ん…」
ちらと横目に山が見えた。山の頂上は薄い円状の雲に覆われている。
「あの山なに?」
「デスマウンテンのこと?活火山よ」
「かつかざん?」
「えぇ。今もたまに溶岩が噴火してるわ。あそこにはゴロン族っていう種族が住んでるの。確か今はなにかの最中だったわね」
「じゃあ危なくないの?」
「大丈夫よ。ゴロン達が守ってくれるもの」
シルファは飲み物を出してくれた。今度はお茶かなにか。
「ゴロンっていったら有名なのが『ゴロンのルビー』よね〜」
これはアルマ。
「ゴロンのルビー?」
「ゴロン族に伝わる赤い宝石のことよ。私は見たことないケド…コキリ族にも『コキリのヒスイ』っていう宝石があるのよ」
とアルマが説明してくれた。
「そうなんだ」
あまりピンとこず、適当に答えてお茶を飲み干す。
「……そういえばなんだけど」
シルファが口を開く。
「あなた時の神殿にいたわよね?そこにオカリナなかったかしら?」
シルファに言われてギク。心臓が口から飛び出そうになった。
「し…知らない」
震える声で否定する。それをなんの疑いもなくすんなり受け入れた。
「そう」
「……あ…情報集めしないと」
窓を見ると太陽が沈み始めていた。
「暗くなる前に情報集めしないとね」
「あらもういくの?」
「うん。エリックのこと心配だし…」
「そう……」
少し名残惜しそうな顔をしてから立ち上がった。
「私達も情報集め手伝うわ。村の人達を手配して回すから」
「あ、ありがとう!!」
「これも村長としての務めよ」
「ほんとにありがとう!!ご飯とってもおいしかったよ!」
シモンはとびきりの笑顔を見せてシルファ宅を後にした。