遺跡のナンバーズを探しに岩山を登っていった彼の背中を、私はただ見送ることしか出来なかった。
本当は心配で心配で堪らなかったのに。私はいってらっしゃいも言えなくて、言うのが怖くて……。
一緒に下に残った小鳥ちゃんも、やはり遊馬くんが気にかかるのか、心配そうな顔をしていた。 ただ一人、璃緒ちゃんだけはすごく落ち着いていて、凌牙くんのことを信用してるんだなって分かったから、余計カイトくんの心配をしている自分に嫌気が差す。
カイトくん。カイトくん。
お願いだから無事に帰ってきて……。 私はじっと岩山を見上げて祈ることしか出来ない。
そうして祈り続けていると、龍の咆哮が聞こえた。
「……!!」
どうしてだろう。いや、咆哮が聞こえたからか。まだ戦っているのはカイトくんだなんて分からないのに、やけに胸騒ぎがする。
カイトくん。カイトくん。
やはり、私は無力だと実感した。
暫くして、咆哮が止み、突如岩山が縮んだ。 原理が理解できなくて焦るが、その上にカイトくんを見つけ、私の頭の中にあった様々な考えがどっかに行ってしまう。
「カイトくんッ!!」
私が精一杯に声を張り上げれば、こちらを見た彼が呆れたように苦笑する。 それだけでも、胸がいっぱいになった。
カイトくんは岩山を蹴り、飛び降りてくる。私はそんな彼の行動に、身体が勝手に動いていた。
地に足を着けた彼に駆け寄る。 ああ、視界がグチャグチャだ。
「カイトくん…!!」
近寄れば近寄るほど彼の姿がボロボロなのに気付く。やはり、戦ったのはカイトくんだったんだ。
至近距離まで走り、飛び付く。カイトくんは私の抱き着きを受け止め、また苦笑を漏らした。
「カイト、くん……」
「お前は、よく泣くな」
そんなことを言われても、と思う。 だって、本当に心配だったんだ。
彼の胸に埋めていた顔を上げ、カイトくんを見上げる。
ああ、よかった……無事に……。 本当はそう言うつもりだった。
なのに……。
「カイト、くん…?」
その頬には赤いキズが。
それ以外にも、小さなキズが沢山あるではないか。
「名前……?」
私の名前を紡ぎながら首を傾げる彼に、私はつい声を荒げてしまう。
「どんなデュエルをしたの!!??」
カイトくんに聞いても答えてくれなかったから、遊馬くんに聞くと、「すごいんだぜ!?自分でLP削ってさ!!」そう無邪気に教えてくれた。
へーへー。そっかー。自分のLPをねー?
今にも逃げ出しそうな彼の襟首を掴み、つい感情に任せて怒鳴る。
「心配したんだから!」
……………………………………
あのキズ治療させて下さい!