※バリアンで小ネタ
「あ゙ーッ!!! テスト、しゅーりょー!」
いつも通りの帰り道を五人で歩く。 こんな生活が、もう当たり前になってしまった。
「アリトは色んな意味でー」
私は前方で言ったアリトの言葉にそう続け、少し後ろを歩くみんなの顔を盗み見て、せーの と合図を送る。 すると、みんなが当然のごとく口を開いた。
「「「「しゅーりょー」」」」
「うっせぇ!!!」
相変わらずなアリトのツッコミにクスリ と笑ってしまう。この前のテスト後の帰り道でも同じことをやった。
「じゃあ、今回は出来たの?」
嫌らしくつり上がっているであろう口元を右手で隠し、私はアリトに訪ねる。 するとアリトは、やはり顔を伏せ唇を噛んだ。
やっぱり出来てないんじゃーん。 私が言えば、アリトは 次から本気を出すんだよ! と潤んだ目で吠える。
「次回から本気を出すんですってよ」
どう思います? と後ろの三人に首を巡らせれば、まずミザエルが口を開いた。
「負け犬の遠吠えだな」
「非効率的だ」
「本気があるんなら最初から出せよ、バーカ!ヒャハハ」
次に言葉を発したのはドルベで、最後はベクターだった。ベクターは楽しそうに笑っているけれど、内心は心配で仕方ないんだと思う。 何て言ったって、私たちの保護者だし。
三人に打ちのめされたアリトは、お前ら最低だな! と指を差して声を張り上げた。 だから、それが負け犬の遠吠えだって。
「ふふふ」
私の横を、ベクターとミザエルが通りすぎ、二人でアリトを追いかけ始めた。 あとで勉強だー! とか叫びながら。アリトは心底嫌そうだ。
「楽しいか?」
隣に並んだドルベがそう聞いてきたため、私はうん と頷く。
楽しいよ。今が一番、楽しい。
「この時が、永遠と続けばいいのに……」
「そ……うか……」
気まずそうに答えたドルベに、つい謝りたくなってしまった。
ごめんねドルベ。めちゃくちゃ反応に困ること言ったよ私。
そりゃあ、そうだよ。
みんなはこの世界の人じゃないくて、バリアンで、全然敵で、倒すべき相手なんだよ。
でも、私は願ってしまう。 とてつもなく不相応で、不純なことであるけれど、焦がれずにはいられない。 彼らと過ごす、永遠を。
ああ、いつの間に彼らの存在は、私の中の大半を占めていた。
彼らがいなくなったら、私はまた一人きりでご飯を食べるのだろうか。 前までは、それが当たり前だったのに。
「いや……だなぁ……」
誰の耳にも届かないくらい小さく呟いた言葉。それは、余りにも自分勝手で醜かった。
彼らの帰る時が来たら、私は笑顔でさよならを言えるだろうか。強がりの、また会おう が言えるだろうか。
分からないし、分かりたくない。今は。
私は考えを打ち払い、顔を上げた。
「今日はテスト終了記念に焼き肉でもしようか!」
私の言葉にアリトが飛び上がり、ミザエルはポテサラを要求してくる。予想通りすぎて笑いが溢れる。
隣にいるドルベはその二人に呆れてるようで、肩を竦めた。
ベクターは資金回りを気にしているようだ。
頭が痛くなるような計算をしているベクターの頭を鞄で叩き、私はみんなの先頭に立つ。
「よっしゃ!買い出し行くぞー!」
未来のことなんて、考えるのは止そう。
今は、今が楽しければそれでいい!
駆け出した私の後を、アリトは楽しそうに、ミザエルはポテサラと叫びながら、ベクターは未だ計算を続けて、ドルベは溜め息を吐きながら。そうやって、四者四様に着いてきて、私は思わず、口角を上げた。
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青春だなー いいなー