YGO短編2

□ある日の夕方のこと
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※バリアンで小ネタ


「あ゙ーッ!!! テスト、しゅーりょー!」

いつも通りの帰り道を五人で歩く。 こんな生活が、もう当たり前になってしまった。

「アリトは色んな意味でー」

私は前方で言ったアリトの言葉にそう続け、少し後ろを歩くみんなの顔を盗み見て、せーの と合図を送る。 すると、みんなが当然のごとく口を開いた。


「「「「しゅーりょー」」」」

「うっせぇ!!!」


相変わらずなアリトのツッコミにクスリ と笑ってしまう。この前のテスト後の帰り道でも同じことをやった。

「じゃあ、今回は出来たの?」

嫌らしくつり上がっているであろう口元を右手で隠し、私はアリトに訪ねる。 するとアリトは、やはり顔を伏せ唇を噛んだ。
やっぱり出来てないんじゃーん。 私が言えば、アリトは 次から本気を出すんだよ! と潤んだ目で吠える。

「次回から本気を出すんですってよ」

どう思います? と後ろの三人に首を巡らせれば、まずミザエルが口を開いた。

「負け犬の遠吠えだな」
「非効率的だ」
「本気があるんなら最初から出せよ、バーカ!ヒャハハ」

次に言葉を発したのはドルベで、最後はベクターだった。ベクターは楽しそうに笑っているけれど、内心は心配で仕方ないんだと思う。 何て言ったって、私たちの保護者だし。
三人に打ちのめされたアリトは、お前ら最低だな! と指を差して声を張り上げた。 だから、それが負け犬の遠吠えだって。

「ふふふ」

私の横を、ベクターとミザエルが通りすぎ、二人でアリトを追いかけ始めた。 あとで勉強だー! とか叫びながら。アリトは心底嫌そうだ。

「楽しいか?」

隣に並んだドルベがそう聞いてきたため、私はうん と頷く。
楽しいよ。今が一番、楽しい。

「この時が、永遠と続けばいいのに……」
「そ……うか……」

気まずそうに答えたドルベに、つい謝りたくなってしまった。
ごめんねドルベ。めちゃくちゃ反応に困ること言ったよ私。

そりゃあ、そうだよ。
みんなはこの世界の人じゃないくて、バリアンで、全然敵で、倒すべき相手なんだよ。
でも、私は願ってしまう。 とてつもなく不相応で、不純なことであるけれど、焦がれずにはいられない。 彼らと過ごす、永遠を。

ああ、いつの間に彼らの存在は、私の中の大半を占めていた。
彼らがいなくなったら、私はまた一人きりでご飯を食べるのだろうか。 前までは、それが当たり前だったのに。

「いや……だなぁ……」

誰の耳にも届かないくらい小さく呟いた言葉。それは、余りにも自分勝手で醜かった。
彼らの帰る時が来たら、私は笑顔でさよならを言えるだろうか。強がりの、また会おう が言えるだろうか。
分からないし、分かりたくない。今は。

私は考えを打ち払い、顔を上げた。

「今日はテスト終了記念に焼き肉でもしようか!」

私の言葉にアリトが飛び上がり、ミザエルはポテサラを要求してくる。予想通りすぎて笑いが溢れる。
隣にいるドルベはその二人に呆れてるようで、肩を竦めた。
ベクターは資金回りを気にしているようだ。

頭が痛くなるような計算をしているベクターの頭を鞄で叩き、私はみんなの先頭に立つ。



「よっしゃ!買い出し行くぞー!」



未来のことなんて、考えるのは止そう。

今は、今が楽しければそれでいい!


駆け出した私の後を、アリトは楽しそうに、ミザエルはポテサラと叫びながら、ベクターは未だ計算を続けて、ドルベは溜め息を吐きながら。そうやって、四者四様に着いてきて、私は思わず、口角を上げた。





……………………………………


青春だなー いいなー





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