YGO短編2

□crush
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「名前、好きなやつって…誰?」

十代と卓上デュエルをしていた時だった。 十代がデッキのトップから一枚カードをドローして、何やら手札を見つめ思案し出したから、私は彼にどうしたの って疑問を投げ掛けた。すると十代は顔を上げ、じっと私を見たかと思うと、唐突にそう言った。

「……え?」

しかも、「好きなやついるの?」ではなく、「誰?」と聞いてくるということは、私に好きな人がいることを知っているらしい。 誰だ。そんなこと言ったの。 あの青髪フリル方向音痴留学生か。たちの悪い。
どうせあいつのことだから、うっかり口を滑らせちゃったんだろうけど。

「なんで、いきなり?」

素直に答える訳にもいかず、私は上手く話を逸らそうとする。
十代は、そんな私に向けて、ニカッ と笑い だって気になんじゃん! と言った。喉が詰まった。むせかえりそうになる。止めてよ十代。そんな笑顔、見せないで。つい言ってしまいそうになるから。 十代が好き って言ってしまいそうになるから。

「俺……?」

きょとんとした面持ちの十代を見て、私はしまったと思い自分の口を塞ぐが、もう遅い。どうやら、考えを口に出していたらしい。
逃げたい。逃げたい。逃げてしまいたい。

私は手札を机の上に叩き付け、席を立つ。ダメだ。逃げよう。そして暫くは十代と距離をおこう。
私は口を覆ったまま十代に頭を下げる。そして身を翻し、早くここから逃げよう−−。

「待った!」

しかし、そんな逃亡計画は十代によって引き止められてしまう。
真っ直ぐに私を見つめる瞳に、思わずたじろぐ。心の奥底まで見透かされているかのようだ。居心地が悪い。

「名前、俺が好きなのか……?」

もうどうにでもなれ!私はそう決意し、肯定の意を込めて首を振る。


「……よかったぁ〜……!!」


私の頷きを見た十代がそう笑った。心底安心したように笑った。
言葉の意味がいまいちよく分からなくて、私は首を傾げてしまう。 なにが、よかった なの?

「ああー! 俺の一方通行なのかと思ってたぜ〜!」

十代の言葉を受け止め、思案し、ゆっくりと咀嚼する。 そして、やっと意味が分かって、私は必然的に顔に熱を集めてしまった。

「じゅ、十代…」

名前を紡げば、立ち上がった十代に強く抱き締められた。加減がなくて、ギシッ と骨が軋む音がする。痛い。

でも、その不器用な抱き締めがものすごく嬉しくて。 私は十代を好きになってよかった。と心底歓喜した。



大好き十代。






……………………………………


大好き十代。(管理人談)





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