YGO短編2

□キスしない
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私はずっとアリトくんが好きで好きで、一目惚れだったんだけど、でも彼を知っていく度にまた好きになって、アリトくんも私と一緒にいてくれるし、自分から、三年である私の教室まで来てくれたこともあったし、だから、きっと両思いなのかな?って思って告白したら、アリトくんは私を抱き締めて、好きだって言ってくれた。
それが嬉しくて嬉しくて、でもアリトくんはすぐ私を解放すると、真っ赤な顔で後退り謝るから、私はそれにくすりと笑って、やっぱり好きだなって認識した。
初だけど誠実なアリトくん。
彼のそんなとこも大好きなんだけど……付き合ってもうすぐ一ヶ月。一度もキスをしてない。


「ねぇ、アリトくん」

私が隣を歩くアリトくんに声をかけると、私より少しばかり背の低い彼が、緑の瞳で私を見上げて首を傾げる。

「なんだよ?」
「あ、のさ……」

キスをして って、それだけなんだけど、めちゃくちゃに恥ずかしい。ああ、せめてアリトくんが鋭くて、なんとなく察してくれたらいいんだけど、アリトくんにそんな能力があるわけないから、私は羞恥心を堪えながら口を開く。

「キ、キス……して欲しいな…って……」
「え」

私の言葉に止まった彼と一緒に、私も足を止める。アリトくんは、何度も瞬きをした後に、「えぇっ!?」とひっくり返った声で言いながら、身を反らした。
やばい……。恥ずかしさで死にそう……逃げたいよぅ…。

「キ、スか…?」
「うん…」

私が問いかけに頷けば、アリトくんが生唾を飲み込む音がした。
アリトくんも緊張してるんだって思ったら、とても申し訳ない気持ちになる。

「キス……は、まだ………まだムリだ!!」

褐色の肌を朱色に染めたアリトくんは、焦げ茶色の頭を左右に激しく振り否定を主張している。

「ま、まだって、どういうこと!?」

いつまで待てばいいの!? 私が聞くと、アリトくんは私に勢いよく指を差し、やけに饒舌な早口でしゃべりだした。

「俺が名前よりでかくなるまで!!俺が名前より自立出来るまで!!俺が、きちんと、名前に責任をとれるようになれるまで!!」

思わず、私は視界を歪めてしまった。目頭が熱くて、泣いてるんだってわかる。
目の前のアリトくんが慌てたような声を出しているが、ごめんね、悲しいわけじゃないんだ。だからそんな顔しないで? と、言いたくても口が上手く動いてくれない。

アリトくんが、きちんと私のことを考えてくれてるのが嬉しくて泣いてるんだ。

私、我が儘だったかも。アリトくんは、そこまで考えてくれるのに……。

どうしていいか分からなくなったのか、アリトくんは優しく、でも強く私を抱き締めてくれた。
それもまた嬉しくて、私はこの時、ファーストキスは結婚式だと心に決めた。







……………………………………


アリトくん可愛い。
アリトくん×年上 たまらん。




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