数日前から感じていた。私はどうやらストーキングされてるらしい。
誰といても、どこにいても(流石に家の中ではないが)視線を感じる。一人でいる時は、かなり近くから視線を感じる。
私は怖くて怖くて仕方なかったけれど、でも、私個人の問題だから友人に迷惑をかけるわけにはいかなく、誰にも言っていない。その代わり、出来るかぎり一人で出歩くのはやめて、深夜にコンビニに行くのもやめた。それでも、白昼からの視線だけは避けられなかった。
「…………」
今日も視線を感じる。怖い。
早足で歩けば、そのストーカーもまた後をついてきた。
私が追えなくなるまで追うつもりなんだ。
なぜストーキングされるのか。私にはなんの思い当たりもない。なにもしていない。誰かに思わせ振りな行動をとった覚えも、誰かを不快にさせるような行動をとった覚えもない。なのに、なぜ……?
私はついに走った。
もう耐えられなかったんだ。こんなストレスばかりの日々に。だから私は、今、ストーキングされてからはじめて走った。
街の人々の間を上手くすり抜けながら走る。狭く入り組んだ道を選択しては、逃げ切る方法を思案し、行動に移した。
だけど、今日のストーカーはやけに俊敏で逃げ切れない…。
仕方なく、捕まったときのリスクが高いが、逃げ切れる可能性が一番ある路地裏に身を滑らせた。後ろを確認しながら、奥へ奥へと身体を動かす。
しかし残念ながら、この路地裏には限界があった。
「うそ…!!行き止まり!?」
引き返そうと身体を翻すと、正面から嫌に響く足音が近づいてきていた。ああ、終わった。
私はその場に踞り、身体を守る体勢になる。まぁ、気休め程度だが。
徐々に足音が大きくなり、やがて、私の前で止んだ。
「やめ……なんで……」
私が意味もないだろう言葉を吐くと、目の前に褐色の掌が差し出された。「え?」驚いて顔を上げると、赤色のシャツを着た少年が健康的な笑みを私に向けているではないか。
助かった。直感的にそう思い、私はその掌に自分の震えるソレを重ねた。
「−−っ!?」
その瞬間だ。
重ねた掌が折れてしまうのではないかと思うほどの握力で握られ、まるで釣竿で魚を釣ったように持ち上げられた。腕が拉(ひしゃ)げてしまいそうだ。
「い、た…っ」
余りの痛さに鈍い反応しか出来ていないと、唐突に唇に何が当たる。私の脳内が、訳のわからない音量で警笛を鳴らす。
それがキスだと気付いたのは、酸素不足で頭がふらふらしてきた時だ。
私が気を失いかけた瞬間に唇は離れ、褐色の少年は妖艶に口角をあげる。思わず身震いがした。
「やっと捕まえたぜ……名前、絶対離さない」
何もかもが分からなくて、私は首を傾げてしまう。わかるのは、この少年がストーカーだったということ。
私は思い知った。
彼は、いつまでも、どこまでも私をストーキングし続けたであろうことを。
愛なんて、くそ食らえだ。
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ヤンデレアリト
ストーカーものやりたかったんだー←