「名前さん」
橙の髪の毛を持った真月くんが、私に向けて無邪気に微笑む。とてもキレイなハズのその微笑に、私は身震いを覚えた。
それもそのハズ。私はこの笑顔になんども痛め付けられてきたのだ。彼がこの顔をする時は、私を絶望に叩き落とす時。
「そんな顔、しないでくださいよ」
誰の所為だ。思うだけで口にはしない。悲しそうに眉を八の字にする真月くんに、嫌悪する。気持ち悪い。聖人みたいな顔しやがって。ただの、ドロドロで汚い、くずの癖に。
「名前さん」
彼は愛おしそうに私の名前を呼びながら、それに似つかわしくない暴力を振るってきた。
頭に震撼。痛み。衝撃。
涙腺が弾け、勝手に涙が流れてきた。
真月くんはくすり と笑うと私の髪を引っ張り上げ、そのまま投げ捨てる。身体が床にぶつかり痛い。しかし、はじめて暴力を受けた時より痛みが無く、慣れてしまったということを実感し、私は訳のわからない吐き気を催した。
「名前さん、可愛いです」
また柔らかな声音と共に腹部に激痛。今度は蹴られたのだ。
真月くんの怖いところは手加減をしないところ。彼は痛みを知らないのか、容赦を知らないのか、過ぎた暴力しか振るわない。それが、怖い。
「名前さん。僕が名前さんの好きなところってどこだと思います?」
唐突な質問に、私は首を傾げてしまう。彼はそんな私を笑い、にこやかなまま口を開く。
「答えてくださいよ」
「………わか、んない…」
本当に本当に分からないんだ。そもそも愛されているのかさえ。だって、真月くんは私を痛め付けることしかしない。だから、分からない。
「分からないんですか…?」
狂気の笑みのまま首を傾げた彼は、徐に私の顔へと手を伸ばしてきた。
「なら、よかれと思って教えてあげます!」
僕が好きなところは……。呆然と、近付く彼の指を見つめていると、グチャリという、聞きなれない音がした。
「え……?」
左の視界がグシャグシャにかき回され、鋭いをとうに越えた痛みが私に降りかかってくる。そして、左目に異物感。
「僕が好きなのは……名前さんの目です」
脳に響く切断音。ブチブチという、その音の後に、言い様のない痛みで私は床をのた打ち回った。
「ああああああぁぁああッ!あッ!ギャアアアアッ!イダイ!イダイイィィイ!!!!」
空洞を感じる。左に空虚感を。
パニックを起こす中、私の冷静な部分が痛みの結論を出す。
左目を、抉られた。
「はぁっ……はぁっ」
まだ存在が感じられる右目で彼を見ると、確かに眼球を手にしていた。赤いものがついた眼球を。
「ふふ!可愛いです!」
真月くんの表情が、ピエロの様に歪み、私は沸き上がる憎悪と恐怖で瞬きを失う。ただ、彼を見つめるしか出来ない。残った、右の目だけで。
「大好きですよ!」
どこまでもキレイな笑顔で、真月くんは私の眼球に口付けをする。
私はその光景に嘔吐した。
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ヤンデ零くん ←
やりすぎましたorz
不快になられた方、申し訳ありませんm(__)m