YGO短編2

□Hunt down?
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※バリアンで小ネタ


たとえば名前が、他の男と話しているとすると、ただひたすら彼女の腕を掴みたくなる。
たとえば名前が、私の知らないところで笑顔になっているとすると、ただひたすら彼女を泣かせたくなる。
でも、泣いている彼女を見ると、結局何も出来なくなるから、そんな自分に嫌気が差す。

そんなことばかりを繰り返し、私はドンドンと泥沼にはまっていった。 だが私には、なぜ泥沼にはまっていったのかが分からなかった。
気付けばもう、私は抜け出せないところにまで来ていたのだ。永遠と続くループ。

私はその醜いループから抜け出したくて、でもやはり、どれだけ足掻いても抜け出せなくて。私はただただ悲観した。


私は何をしているのだろうか。私は彼女をどうしたいのであろうか。
彼女の笑顔が見たいのか、彼女をひどく泣かせたいのか。 ぐるぐるぐるぐる。ただループ。

そんな風に考えている間に、彼女は廊下でまた違う男と話していた。私はよく知らないが、彼女の広すぎる交遊関係の一角であろう。「恋人かもしれない」という考えは、無条件に放棄する。
彼女が楽しそうに笑っているのを見て、私の心がじゅくじゅくと鳴り出した。

ダメだ。 止まらない。



「−−−ドルベ…?」



気付くと私は、彼女を空き教室の暗闇に引きずり込んでいた。 闇でも分かるほど至近距離にいる彼女が、私を不安げに見上げているのが、うっすら見える。 あぁ、私は何をしているのであろうか。

「ドルベ、どうしたの?」

彼女の熱を帯びた小さな掌が、私の頬に触れた。私は思わず肩を揺らしてしまう。

「授業はじまっちゃうし、あんな勢いよく教室を出てきたんだから、みんな心配しちゃってるよ…?」

「そう……だな」

正論だ。彼女は正論を言っている。 私はその正論に則って教室に帰った方がいいのであろうが、私の身体は、そうは思っていないらしい。


「え…?」


私は何をしているのであろうか。
空き教室を出ようてしていた彼女の腕を掴み、教室の白塗りであろう壁に追い詰めていた。 伸ばした腕は彼女の背中が預けられている壁についている。 まるで、逃げ場を塞いでいるかのようだ。

「名前………」

どうしようも、行き場を無くした私は、彼女の肩口に額を乗せる。暗闇の独特な雰囲気に流されているのであろうか…?
まったく同じシャンプーや柔軟剤を使用している筈なのに、とても花やかな香りが鼻腔をくすぐる。 私の頭が補正でもかけているのか?おかしなことだ。

「ド、ドルベ!?大丈夫!?」

彼女の上擦った声にくすり と笑ってしまう。 どうやら、この状況に落ち着けていないらしい。慌てた様子で言う彼女もとても可愛い。

「体調悪いの!?ね、熱とか!?」

私の目の前で様々な表情を見せる彼女は、いつまでも見ていたくなる。他の男に対しての表情は、見たくも、見せたくも無いと言うのに。


あぁ、そうか。 これが、そうか。 きっと、そうか。

そうか、そうか。「嫉妬」という感情か。

「ふはっ……」

それに行き着いた私は、思わず笑みを溢してしまった。
彼女は不安げに私の名前を読んでくる。 しかし、どうやっても笑いが止まってくれそうに無い。

今までぐちゃぐちゃ と渦巻いていた思いも、名前さえ分かればなんてもなくなった気がする。
なんだ、とても簡単なことだったんだ。

「名前」

「はい!?」

裏返った声に、また笑ってしまう。久し振りにこんなに笑ったかもしれない。
「笑いすぎじゃない!?」と、名前が頬を膨らませているのを見て、私は短く謝り、壁についていた掌を離した。 これも、嫉妬故の行きすぎた行動か…。 まったく、醜いな。


「名前 私はお前が」

その瞬間、始業2分前のチャイムが鳴った。

「あぁ。もう授業がはじまるな」

「え!?」

「行くぞ」私は空き教室の扉を開け、廊下に出る。 後ろから、かかとを踏んだ上履きから鳴る、パタパタ という音が追いかけてきた。

「ドルベ! さっきの、何言おうとしていたの!?」

無邪気に聞いてくる彼女のおでこを軽く小突く。 痛くは無いだろうが、彼女は小さく「痛っ」と漏らした。

「さぁ、教室に戻るぞ」

「ねぇ!?ねぇ!!?」と、未だに問いてくる彼女にまた笑い、私は最後まで答えず教室に戻った。






教室に足踏みした瞬間に、クラスメイトのほとんどにはやされたのは言うまでもない。



……………………………………

ドルベに壁ドンをさせたかっただけです(* ̄∇ ̄*)




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