YGO短編2

□純白ドレスはもう要らない
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神様神様。

私の夢は「お嫁さん」です。いつか好きになった人の、お嫁さんになることが夢です。多くは望みません。だから、この夢だけは、せめて叶えてください。私の些細なお願いです。弱くて脆い、人間のお願いです。

神様神様。どうか。











「私は、ベクターのお嫁さんになりたいよ」


私が真っ直ぐに彼に言えば、彼は紫色の瞳をクリクリと回し、嘆息した。

なんでそんな反応するの?私は本気だよ。ベクターのお嫁さんになりたい。ベクターは異世界人?世界を滅ぼす?だからなに?
私はベクターが好きなの。バカみたいに自分の目的に真っ直ぐな彼が。結局は優しい彼が好きなの。何もおかしくは無い。

恋にルールなんて無いよ。好きになったら、たとえそれが友達でも、家族でも、同姓でも、人間じゃなくても関係ないよ。
そんなものに縛られたら恋なんて出来ないんだよ。
だから私はベクターのお嫁さんになりたい。好きになった人の……異世界人のお嫁さんに。


「バァカァかぁ?てめぇ。人間が俺と結婚できると思ってるのかよ」
「出来るよ。結婚は二人の合意があれば出来るんだから」
「人間の法律に当て嵌めんな」


俺らに結婚なんて無いんだよ。そう言ったベクターに、私は愕然としてしまった。
私はベクターが好きなのに。お嫁さんにはなれないんだね。夢は、叶わないんだね。

ああ、神様神様。

貴方はなんて酷なんだ。私は、それ以上を何一つ望まなかったというのに。たった一つのお願いさえ、叶えてはくれないんだね。

じゃあ、いいよ。夢なんて、要らない。純白のドレスなんか、必要ない。


「私、誰のお嫁さんにもならない」
「は?」
「お嫁さんなんて夢、今捨てた。ベクターのお嫁さんになれないなら、そんなものは要らない」


「名前……お前」ベクターが何かを言う前に、私は彼に飛び付いた。
要らない。要らない。何にも要らない。ずっとずっと願ってた夢だけど、叶わないなら要らない。その代わり、ベクターのモノになるよ。お嫁さんじゃない。モノになる。だからお願い。私を受け止めて。ベクターのためなら何でも出来るよ。世界だって捨ててやる。


「お前、大馬鹿野郎だな」


そう言ったクセに、ベクターは私を抱き締め返してくれた。
私の中の純白ドレスは、まるで花弁のようにはらはらと崩れ去った。





……………………………………

ベクター好きのみなさんだって、ベクターのモノになれるなら世界は捨てる筈!(偏見)



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