蛇寮短編

□〜グッモーニン、愛しのにゃんこ様〜
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 「いたたたた、セブルス、そこ、目!目!」





飼い主様の大事な左目だよおお!





 「にゃ…。」


 「寝ぼけてるね!?」





どうやら、先ほど叫んだせいで起きたのは、可愛い子猫だけではなかったらしい。

猫に低血圧なんてあるのか知らないが、このセブルスは朝に滅法弱い。

起きるのも遅いし、しっかり覚醒するまでに時間がかかるので、ベッドから落ちることもしばしば。
(そして、落ちた状態のまま、また寝る。)


寝ぼけて、いつものクールな彼なら絶対やらかさないようなことをするので、
貴重な可愛い時間帯…という認識だったのだが、こうして飼い主がたまに被害者になる。





 「痛い、瞼越しにグイグイ来てるよ!なんか、白い光が散って見えるもん!」


 「うー。」


 「うーじゃなくて、前足を退けるんだ!」


 「にゃ…。」


 「そうそう、その調子…だけど、そこも私の顔なんだよ。ちょ、前足が口に入りそうだから!」





食べちゃうぞ、そのスリムな脚を!


寝ぼけたまま、とりあえず、目を踏みつけていた前足を浮かしてくれたものの、
その前足が下ろされたのは、やっぱり私の頬の辺りで。

やばいよ、もう少しずれたら口に前足を突っ込まれそうなんだけど。




 「ドラコ君!ドラコ君、ヘルプミー!」




我が家の個性派にゃんこの中の唯一の良心!いい子で可愛いツンデレにゃんこちゃんは…。




 「寝てた!そうか、おねむだね!」




そういや、セブルスに邪魔されるまで、私が自分で寝かしつけてたもんね!

スピスピ寝てるドラコ君は何も悪くない!




 「んあああ、寝顔可愛いー!でも、痛い!セブルス、おまえ立ったまま寝てない!?」




さっきから、前足で人の顔面踏みつけたまま、微動だにしない黒猫。

目開いてる!?立ったまま寝れるとか、キミはにゃんこじゃなくて馬じゃないのか!?





 「ええい、こうなったら、あんまり期待してないけど、ルシウスー!ルシウス、起きて!助けて!」





一番の気まぐれにゃんこ、ルシウス。
気まぐれなだけに、珍しく飼い主を助けてくれることも、ないとは言えない。

必死に呼べば、足の辺りで横たわっていたペルシャ猫は、ため息交じりに片目を開けた。




 「…にゃーぉ。」


 「え、何、そのままでいろよ的な!?」




面倒くさそうに一鳴きして、再び片目を閉じたペルシャに、ちょっとー!と必死で叫ぶ。





 「ルシウス酷い!ドラコ君ならともかく、セブルスは大人だから!
結構な重さなんだよこれ!ちょ、マジでお願いします、ルシウス閣下!」


 「………。」


 「いやほんと起こしてスミマセンでした!でも、そこをなんとか!」


 「………。」


 「これなんとかしてくれたら、寝起きのブラッシングしてあげるから!」


 「…なーぉ。」





ブラッシングを餌にしたら、言葉がわかるのか不明だが、
ルシウスは盛大なため息付きで、仕方ないなぁとのそのそ立ち上がってくれた。


3匹の中で一番大きいペルシャ猫は、まるで子猫を運ぶように、
セブルスの首の後ろを咥えて強制的に移動させてくれる。


これが起きている時なら、こんな扱いをされて黙ってはいないセブルスだが、

案の定、飼い主様の頬を踏んづけたまま寝入っていたらしい黒猫は、
無抵抗のまま、ズリズリ引きずられていった。
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