短編
□2月14日
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2月14日…そうバレンタインデーである。
元は海外の行事だが、最近ではお菓子メーカーの策略で日本でも非常に盛り上がっている行事の一つだ。
『どうしよう…やっぱり手作りの方が良いですかね?』
名無しさんは、バレンタイン特集と書かれた雑誌を広げて呟いた。
そこには、絶対に落とす!!や、これで彼のハートを独り占め!!など、定番の決まり文句が並び写真が載っていた。
『でも、神獣様はいつもすごい数貰ってるし、もしかしたら今日は帰ってこない可能性もありますし…』
そうだ、白澤は女好きということもあり毎年大量のチョコを持って帰って来る。
去年は、一週間ずっとチョコを食べ続け白澤が、もう当分食べたくないと言う位であった。
『桃太郎さんとか地獄の皆さんのもあるし…何か作りましょう!!』
名無しさんは、無難に誰でも食べられるクッキーを作ることにした。
プレーンとチョコレートの二種類を作る為にチョコを湯煎にかけ溶かしていくと、店全体に甘い匂いが漂う。
が、薬品の匂いと混ざっているのでなんとも言えないが…
「おはよう名無しさん」
『神獣様、おはようございます』
匂いに釣られたのか、寝ていた白澤が台所に現れた。
「何作ってるの?」
『クッキーです』
「バレンタインの?」
『はい』
白澤は、名無しさんの方に近づくと後ろから抱きついた。
「そんなに作って…またあのハシビロコウにもあげるの?」
『勿論ですよ。色々とお世話になってますし』
「…ふ〜ん」
『何拗ねてるんですか。それと離れて下さい』
「拗ねてないもーん」
白澤は、名無しさんに手の甲を捻られてようやく体を離した。
『そういえば、妲己様から店に顔を出して欲しいと電話がありましたよ』
名無しさんの言葉を聞くと白澤は、少しまだ拗ね気味に店を出て行った。