とあるマネージャーの青春物語
□『一緒に、日本一目指そう?』
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高らかに宣言する火神に迷いなど一切なかった。
平然とフェンスから降りた火神が不意にリオへ目を向ける。
「必ず、やりとげるからな」
まっすぐ、必ず成し遂げるという意思を含ませた言葉をぶつけてくる火神にリオは目を見張った。
キセキの世代がどれ程の実力を持っているか知らないわけでもないのに、火神は全く疑っていない。
自分が――誠凛が日本一になることを。
バカみたいにストレートで熱い想いを感じ、目頭が熱くなる。
それは、この誠凛バスケ部の仲間達が掲げる想いと遜色ないものだったから。
『!…うんっよろしくね〜!!』
大歓迎だよっ
嬉しくて嬉しくて、リオは己より二回りは大きな火神の手を掴み、両手で握り締める。
やはり彼もバスケを長年する者特有の大きくて硬い掌をしていた。
リオはこんな手が好きだ。
たくさんたくさん努力をして、頑張っている証のようだから。
満面の笑みで手を握るリオに女性との接触に馴れていないのか、火神はカッと頬を赤くする。
お、おい…と先程高らかに日本一宣言をした者とは思えないか細い声を出す火神に側で見ていたリコはオヤオヤと何だか楽しそうだ。
リオはスキンシップが好きらしく、なついた人限定でハグをしたり手を握ったりしてくる。
リコは同じ部内で唯一の同性ということもあり、殊更そういった機会が多い。
勿論、彼女程ではないが2年バスケ部員もだ。
ただし、リオはその分警戒心が強いためそんな風に接してもらえるまで時間がかかるのだが、火神はこの短時間でそれを解いたらしい。
中々珍しい出来事にリコは女性特有の好奇心が湧いてきた。
もしかして、火神君に…?
「すいません、ボク声張るの苦手なんでこれ《拡声器》使ってもいいですか?」
わぁっ
ちょっとした邪推をしていたところにタイミング良く黒子が現れ、リコは声にならない悲鳴をあげる。
その時何やら勝ち誇った様に見えたのは気のせいだろうか。(勿論黒子は無表情のままだったが)
標準装備の無表情な黒子の手には一体どこから持ってきたのか拡声器が握られていた。
火神の宣言の後すぐに名乗り出なかったのはこれを探していたかららしい。
『おぉ、黒子くんよく見つけたね〜』
「はい。少し……お借りしました」
途中の間が気になるものの、深くつっこんではいけない気がして全員スルーする。(どこかで伊月がキタコレ!と言った気がした)
黒子が宣言をするため息を吸い込んだ、その時。
「コラー!!またかバスケ部!!」
『あ、先生来ちゃった』
「あら今年は早い!?」
昨年やらかしたからか、今年は教師陣が乗り込んでくるのが早い。
その為、火神以外の1年生達はお預けとなった。
折角宣言しようとした黒子も出来ずじまいでショックを受けている。
その後、教師からみっちり説教を受けたのは言うまでもない。
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