K 短編

□ねぇっ。
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「キラ、今日もお昼一緒に食べよう!」

読書中の加菜野にそう話かけたのは、
クラスメイトであり加菜野の彼氏である
伊佐那社である。
机に本を置き「いいよ。」と言いながら
伊佐那を見る加菜野。

「ほんとっ!?やったぁ!!
じゃあ、先に行ってるから後でいつもの所に来てね!」

と言って教室を出て行った。
嬉しそうに出て行った伊佐那を見つめている加菜野。


「鼻歌でスキップって・・・
シロ君喜びすぎでしょ・・・。」










伊佐那が教室を出て行ってから10分後。
加菜野は屋上へ行く階段を上っていた。

ギギィィィ・・・・。

錆びたドアを開けると同時に風が通り抜ける。

「?あっ、キラ!遅いよ〜。早く食べよっ!お腹すいちゃった。」
「うん、ごめんね。食べよっか。」

加菜野がお弁当を取り出していると伊佐那が物欲しげな目で加菜野を見ていた。

「・・・伊佐那君、君は今日もおかずが
無いのかね?」
「うん!だから頂戴!」

伊佐那は今日一番ともいえるような笑顔で返事
をした。

「もうっ・・・少しは自分で作りなよぉ。」
「だって、キラの作るお弁当おいしいんだもん!」
「・・・甘やかしてる私が悪いのな。」



早く早くと言わんばかりにおかずを待っている伊佐那。甘やかすのは良くないのかと考えている加菜野。

「はぁっ・・・。
どれが欲しい?」

結局甘やかしてしまったと思っていると

「これ。卵焼きがいい。
キラの卵焼き、甘くておいしいから!」
「そうなの?」
「うん!」

「はい」っと卵焼きを伊佐那のご飯しか入っていないお弁当にのせようとすると

「ねぇっ・・・あーんしてよ。」
「・・・はっ?」
「だから、キラが僕にあーんして食べさせてって言ったんだけど・・・。」

箸を持っていた手を掴まれ、「ダメ?」と見上げられたらこれは断れない。

「本当は口移しが良かったんだけど・・・」
「なっ、何言ってんの!?」
「ほら。そうなると思ったからやめといた。」


伊佐那は「あーんして♪」と口をあけてまっている。

「・・・。」
「?どうしたの。恥ずかしい?」

あたりまえだ、そう口にしようとした時

「!!」

目の前に伊佐那の顔があった。
触れるだけの軽いキスだった。

「キスより恥かしい?」
「・・・ううん。」
「じゃあ出来るよね。」

「・・・あーーん・・・。」
「んっ。ん〜〜、おいしい♪
さすがキラだね。」

そんな褒め言葉も今の加菜野には聞こえなかった。
 

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