短編
□届かない声
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気がつくと、大きな絵の前で立ち尽くしていた。
「…………」
何をしていたのか思い出せない。
……思い出せないけど、なんだかとても大事なことのような気がする。
「イヴ、お手洗いはきちんと済ませるのよ」
「はーい」
いつの間に側に来ていたのか、お母さんが私にそう声をかけてきた。
ここに来てどれくらいの時間が経ったのかわからないけど、そういえば一度もトイレに行っていない。美術館に来てからどころか、朝起きてから行っていなかった。
とりあえずトイレに行こう。